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予想外 5

「あ、いや、でも勘違いしないでよ? 別に僕はアイツに性的な事をされてるとか、そういう事じゃないから」 「そっか……よかった」  性的ではないという言葉に佑月は半ばホッとするが、不安が払拭されたわけではない。  樹の表情も先程と変わらず厳しいままということもあるが、まだについて解明されたわけではないからだ。 「僕はさ……アイツと嫌な物で繋がってるんだよ。こういう表現するだけでも、我慢ならないほど不愉快なんだよね」 「嫌な物で繋がってる?」 「うん……。それだけはどうにもならなくて」 「それって……」  その先の言葉を口に出すのは(はばか)れたため、黙る佑月に樹は苦笑を交えて頷いた。  だが佑月の中では大きな疑問でいっぱいだった。それを察した樹が口を動かそうとしたとき、部屋の扉がノックされた。 「失礼します。樹さま、旦那様がお戻りになられましたので……」  遠慮がちに扉が少し開き、姿を見せたのはメイド服を身に纏う若い女性だった。 「分かった。直ぐに帰る」  樹が答えると、メイドは深く頭を下げて、下がっていった。もう少しゆっくり話をしたかったのに、思うように事が運ばないことが佑月に焦りと苛立ちが募っていく。 「成海さんごめん。とりあえず今日はアイツに会いたくないから帰るけど、今度ゆっくり会ってもらえないかな? 話したいことがあるんだ」 「うん、分かった。あ、そうだこれを……」  また会えることを嬉しく思いながら、佑月はスーツの内ポケットに手を突っ込んだ。 「名刺……」 「仕事があると出られないけど、電話くれたらこっちからも連絡するから、番号通知にしておいて」 「分かった、ありがとう! 明日昼前に一応電話するね!」  樹は少年らしい笑顔を見せてから、早々と部屋から姿を消した。  一人になった部屋で、佑月は頭を抱えるように額に手を置いた。まさかこんな場所で、樹と再会することになるなど思いもしなかったことだ。何の冗談かと問いたくなる。  何よりも樹とあの男の関係が、佑月の思っていた通りだとすると頭が痛い。樹自身も佑月の言わんとしたことを悟ってか、頷いていたから。全く無関係の間柄なら良かったのだが……。 「はぁ……参ったな……」 「どうした? そんな溜め息など吐いて」  不意を討つ声に驚きで肩が跳ねたと同時に、佑月には一気に嫌悪が湧く。  音も立てず扉を閉め、こちらへと近付いてくる円城寺。 「遅くなって悪かったね。接待が長引いてしまって。早く帰りたくて苛立ったものだよ」  どうでもいい報告など届いてないふりをして、佑月は無表情を保った。  無視をする佑月にもお構い無しに、円城寺は佑月の隣へと腰を下ろしてきた。  柑橘系の香りがふわりと立ちのぼるが、この男の匂いだと思うだけで不快感が増していく。 「佑月は見れば見るほどに美しい。ずっと永遠に眺めていたいほどの神の産物だ。まるで……そうだな、生まれ変わりのようで、神に感謝したくなるよ」 (生まれ変わり……?)  誰の生まれ変わりなのかは知らないが、佑月は怖毛立つ思いで円城寺を凝視した。  目が合ったことで、嬉しそうに目を細めて熱く見つめられゾッとしたが、何故かその目に少しの違和感を感じた。  だがこれ以上目を合わせるのは苦痛だったため、佑月は直ぐに目を逸らした。 「……接待って、会社関係の方なんでしょ? 無理をして時間を取って下さらなくてもいいのに……」  あまり邪険にすると、円城寺に近付いた意味がなくなる。だから少し伏し目がちに造った壁を少し崩した。  それに気を良くした円城寺は、更に佑月へと間を詰めてきた。

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