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《Background》 6
「そりゃ、表立つような真似はしてないからな」
「まぁそうだろうが……。じゃあ、その研究所とやらで薬でも作ってるわけか?」
「あぁ、秘密裏 にな。表はちゃんとした研究所だ。研究員も真っ当な人間しかいない」
「隠れ蓑 ってやつか……。真剣に働いてる人間が浮かばれないな。だが、よくそこまで嗅ぎ付けたな……」
中村が驚くのを余所に、須藤はバーボンを口に含み、美酒を堪能する。
「私の部下が十年前から、研究所に研究員として潜り込んでいます。もちろん正規ではなく、裏ですが」
須藤の後を引き継ぐ泰然。
「裏って……そんなことが出来たんですか?」
大きな組織のトップに立つ人間に、こんな愚問とも言える問いはどうかと思ったが、中村の口からはついと言った風に疑問がこぼれていた。
「円城寺が薬をばらまくのは、当初は日本のやくざのみでした。ですから薬の精製に詳しい外国人などは重宝されました。日本人よりもリスクが少ないとでも考えていたのもあるでしょう。後 のパイプ繋ぎにも考えてたってのもあるでしょうし。何かと裏で暗躍していた円城寺は、我が国ならず、ロシアからも密かに注目されていましたしね」
「なるほど……。では、当初は日本だけだったってことは……今はその外国に目を向けてるってことですよね」
「はい。主に我が国へと。マフィアへの流れが盛んになり、こちらとしては少し迷惑なことになってまして」
泰然の話に頷きながらも、中村は劉家が十年も前から円城寺を張っていたことに驚かされた。そしてこのまま中国マフィアが横行すると、日本も危うくなるだろう。
「大体の話は分かったが仁。わざわざ俺に聞かせるってのは、何か訳があるからなんだろ? それは、お前の大事な大事な人間が絡んでるから。違うか?」
さすが長年の付き合いがあるだけ、踏み入っていい領域と、そうでない領域を良く心得ているものだと、須藤はバーボンで喉を潤してから笑った。
「さあ、包み隠さず話してもらうぞ」
人の悪い笑みを向ける中村に便乗して、泰然も乗ってくる。
「そうですね。私も是非お聞きしたいです」
「……分かった」
観念したような口振りだが、須藤は初めから隠すつもりはなかったように、二人に詳細を語った。
そして須藤の話を聞いた二人は、当然のように協力を惜しまないと言う。
ありがたい言葉を胸に、今日も多忙な須藤の一日は、こうして終わりを告げた──。
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