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真実1
◇
樹との思わぬ再会からの翌日。
佑月はある男に会うために、海斗と二人、とある事務所に訪れている。
佑月に少しの緊張が襲うのは、事務所内にいる数人の男たちが、じろじろと食い入るように見てくるから。
こういう場所なのだから仕方ないとはいえ、気持ちいいものではない。
海斗はこういう場に慣れているため、逆に酷く不愉快そうに何度も舌打ちをしている。
「待たせたな」
二人の男を従えて、本日の目的の男が、やや偉そうに部屋へと入ってきた。この部屋に男ばかりが密集する。うんざりする光景だ。
「……いえ」
佑月と海斗は形だけとばかりに、腰を上げて頭を軽く下げると、直ぐに腰を下ろした。
そんな佑月たちを特に気にした様子も見せず、男は対面のソファにどっさりとふんぞり返る。
「それにしても、相変わらずのべっぴんぶりだな。お陰でその辺の女なんか目に入らなくなっちまったよ」
「おい」
海斗のドスの効いた声。
男はそんな海斗の声を聞いて「はいはい、すみませんね」と謝罪のポーズを取るが、誠意の欠片もないのは一目瞭然だった。
「しかし、本当にここまで来るとはな。見かけによらず、大した肝の据わりようだな」
部下が付けた火で煙草の紫煙を燻らせる、がらの悪い人相の男。歳は四十七。この目の前の男は、柿田組の若頭、柿田 悦司だ。
そう、あのUSBを巡っての依頼で、佑月は嫌な目に遭い、出来れば二度と会いたくなかった人物だ。
だがそうも言っていられないのが、今の現状だったりするのだが。
昨夜、佑月は一か八かで柿田に連絡をした。恨みを買っているかもしれない人物。そして何よりも、やくざである男。故に会うことは困難かと思った。
だが予想に反して、電話口では異様なくらいに緊張が伝わってきた柿田だったが、会うことを了承してきた。
もちろん相手はやくざだ。危険は百も承知。
だけど僅かであっても、円城寺との関わりがありそうだと分かったからには、調べないといけない。
正直に答えてくれる確率が、皆無だったとしてもだ。
そんな柿田をよくよく見ると、余裕のあるような態度を見せているが、少し緊張しているのが分かった。
「しかし、今頃オレに何の用があるんだ? 出来ればオレとしては刺激したくないんだよ。分かるだろ?」
おや? と佑月は内心で首を捻った。
刺激したくないとは、須藤のことを言っているのだろうが、もしかして柿田は何も知らないのだろうか。それともこちらの出方を窺っているのか。
そもそも柿田は、佑月と須藤の関係を知っているのかという疑問があった。
(いや、知ってるいるからこその、さっきの発言だよな)
これも確かめなきゃならない事の一つでもあるが。
「あの、刺激とはどういう事でしょうか?」
「そりゃあ、あれだよ……。アンタ、あの男の……須藤のイロだろ?」
まるで腫れ物に触るかのように、言葉を選びながら柿田は素直に答えをくれる。
やくざの人間なら、わざわざ人の顔色など見ないはずだ。
そしてやはりと言うか、関係を知っていて、現在進行形で訊いてくるということは、現状を知らないということだ。
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