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真実1 4
「まぁ、それもそうか……。実はな、あの円城寺って男は、陰で薬を売ってる」
「く、薬!?」
ショックとはまた違うが、円城寺の下には、沢山の子会社や、傘下企業などがある。
数多くの人々が支えてると言っても過言ではない円城寺グループ。
そのトップである人間が、一生懸命に働く人々を裏切っているなど、佑月は信じられなくて、強い憤りを感じた。
「最悪っすね……」
海斗も実家は極道で、決して誉められた事をしている家系ではない。だが極道という稼業と、堅気の世界での企業とでは比べるまでもない。
「しかも、オレらのようなやくざばかりにな。決してそこらの若造などには回らないものをだ」
「ということは、本来のデータには、顧客の名簿でも入ってたのか?」
海斗がそう訊ねると、柿田は小さく頷いた。
「あぁ、ロシアのブラックマーケットのビッグネームのな」
「ブラックマーケット……」
その名の通り、闇市と呼ばれるもの。
須藤の深い裏の世界を、佑月は改めて思い知らされた気分だった。
「そんなデータが手に入れば、巨額の金が舞い込んでくる。だから円城寺は常々、須藤の動向を探ってたんだが……。まんまとしてやられたってワケだよ」
動向を探られていたからといって、須藤自身が円城寺の耳に入るようなヘマなどはしないはず。
恐らく、本来の取引相手であった近辺に何かあって漏洩した。だから須藤は円城寺の目晦ましをした。
これも佑月の憶測だが、それよりも須藤と円城寺が、自分の知らない時から関わりがあったことに驚いた。
佑月を拉致した時、円城寺と少なからず接点があった佑月を、須藤は一体どう思ったのだろう。佑月は複雑な気分だった。
「そもそも何で円城寺は、やくざに薬を売り捌くなんて事を始めたんすかね? そんなことをしなくちゃならないほど、お金に困ってるワケでもあるまいし、むしろ有り余ってるだろうに」
海斗の言葉に佑月は「確かに……」と顎に手をやった。
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