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真実2 5
今日の仕事を終え、佑月は数時間前に会ったばかりの円城寺の豪邸にいた。
夕方の出来事は、佑月にとっては腹立たしいことだったが、これで円城寺も佑月が手に入ったと思っているはずだ。今なら円城寺も無防備と言える。
ここらでそろそろ佑月も証拠を掴みたかった。
これ以上期間が延びてしまうと、何かと都合も悪くなる。どうしたものかと、佑月が思考を巡らせていると、円城寺は徐にダイニングテーブルから腰を上げた。
「どうしたんだい佑月。そんな悩まし気な顔をして。食事が口に合わなかったかい?」
「いえ……」
ここで佑月は、これはある意味チャンスなのではと考えた。
「少しワインで酔ったようです」
酔ったというのはもちろん嘘だが、足元が覚束ないふりをする。これで円城寺も、更に警戒を弛めるだろうという期待でだ。
「それはいけない。私の部屋で休みなさい」
案の定、心配そうな顔はしているが、どこか嬉しそうに円城寺は直ぐに佑月の元へと寄ると、支えるように腰を抱き寄せた。
「い、いえ、大丈夫です」
「駄目だ。今夜くらいゆっくりしていきなさい。櫻木、後は私が面倒をみるから下がっていなさい」
「はい。かしこまりました」
佑月がチラリと櫻木を一瞥すると、心配そうな櫻木と目が合った。佑月は円城寺に分からないよう、櫻木へと軽く頷いてみせた。
部屋に行くのはかなり危険だ。だがこれも、樹らと話をしたときにも計画に挙がっていた一つの案だ。
そして三十分経っても部屋から出てこなければ、櫻木が助けを手配してくれることになっている。
もちろん櫻木が表立って助けるのではなく、ちゃんと策は打ってある。
その助けを借りることなく、佑月自身でしっかり身を守らなければならないが、きっとある言葉を言えば円城寺の魔の手からは逃れられるはずだ。佑月にはその確信があった。
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