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真実2 7
「な……何するんですか!」
起き上がろうともがくが、円城寺の手の力は緩まない。
「佑月……そろそろいいだろう?」
耳元で囁かれ、佑月の全身の毛という毛が嫌悪で全て逆立った。
ここまでは佑月も想定していたが、これほどまでに嫌忌の念を覚えたことに、早くも後悔しだしていた。
だが後悔しても遅い。ここが佑月にとっても正念場といえた。
円城寺は荒い息を吐き、仰向けになっている佑月に全身を密着させてくる。気持ち悪いことこの上ない。
「円……城寺さん……くるし……」
「はぁ……佑月……佑月……」
佑月の首筋に生暖かいものが這う。円城寺に触れられるだけでも苦痛だが、須藤以外の男に触れられるのは、それ以上に耐え難いものがあった。
「っ……やめてください!」
渾身の力を込めて、佑月は円城寺の胸を強く押す。
「俺は……俺は父さんじゃない!」
佑月が怒鳴り付けると、円城寺は動きを止めた。そしてゆっくりと佑月から身体を離していく。
その表情は驚きで固まっていた。
「……なに?」
思っていた通り、ある言葉で動きを止めた円城寺。それは円城寺にとって触れてはならないものだった。
「俺は父さんじゃないって言ってるんです」
「……なぜそれを?」
円城寺の初めて見る顔。
いつも余裕の表情を貼り付けている男が、動揺している。
「貴方でもそんな顔するんですね」
少しの揶揄を込めて言い、佑月は身体を起こす。
「あ、いや、少し驚いたものでね」
佑月の指摘に、円城寺は直ぐにいつもの自分を取り戻した。
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