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真実2 8
「しかし、なぜそれを?」
「そこのナイトテーブルの写真立て。そこに写ってるのは貴方と父ですよね。二人で写った写真をいつまでも置いてるなんて……」
佑月はさもショックを受けたかのように、額に手をやり俯いた。
「佑月の父親である雪斗とは、友人だったんだよ」
「誤魔化さないで下さい。貴方はずっと父が好きだった。そして俺を父と重ねていたんでしょ?」
佑月がまだ小学生の頃、円城寺は事あるごとに『はやく大きくなれ』と言っていた。
成長すれば、父親の容姿に近づくとでも思っていたのだろう。実際に佑月は雪斗と瓜二つな程に成長していた。
円城寺にとっては、それは喜ばしい事だったに違いない。
「貴方と父のことは、須藤さんから離れる前に聞きました。だけどどうしても信じられなかった。信じたくなかった。でもその写真が何よりも証拠でしょ?」
須藤から聞いたというのは、もちろん嘘だ。樹らからあの時に聞いたことだ。
樹のスマホの画像に収められていた写真と、寸分違わぬ物がナイトテーブルの上にある。
円城寺と父の出会い。その経緯 を、櫻木から何から何まで佑月は聞いたのだ。
だがここで樹らの名前を出すわけにはいかない。交流があることを知られるわけにはいかないのだ。
自分の都合とはいえ、須藤の名前を勝手に持ち出した事を、佑月は心の中で詫びた。
「……須藤か。どこまでも忌々しい男だ。雪斗との思い出を汚された気がするよ」
父との思い出などと言う円城寺に、佑月は不快な思いだった。まるで濃密な時を過ごしてきたと言わんばかりだったからだ。そんな佑月の思いを余所に、円城寺はぽつりぽつりと話し始めていった。
円城寺は二十七歳の時に、都内にある人気のbarを初めて訪れ、そこでバーテンとして働いていた父、雪斗と出会った。
雪斗は二十三歳。若く、とても美しい容姿だった雪斗には、沢山のファンがいた。
客の殆どが、雪斗目当てで訪れていたほどだ。物腰も柔らかく、客の相手をするときも、輝かしい程の笑顔で接し、男女問わず誰もが雪斗に見惚れていた。
そんな雪斗に円城寺も一瞬で虜となったのだ。
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