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油断 2
「佑月、こっちのソファで飲もうか」
円城寺に促されるまま、佑月はグラスを手に持ったまま、円城寺と共にソファへと並んで腰を下ろした。
「マルゴーはフランスワインの女王と言われている。飲んでみなさい」
「……いただきます」
高級ワインだろうが何であろうが、佑月はいま早く帰りたくて仕方がなかった。色々準備もしたいし、仕事も溜まっている。
今日に限ってなぜ佑月を引き留める真似をするのか、この時は解せなかった。
佑月は早くグラスを空けて帰ろうと、一口口に含んだ。最高級と称賛されるだけあって、熟成された華やかな香りは女性的とも言われ、口当たりも滑らかだった。
佑月は無言でその美酒を堪能した。円城寺もワインに口を付け、暫く無言の時間が続いた。
「佑月には、私の秘密を打ち明けた。これからは一蓮托生だ。永遠に私の傍にいると約束しなさい」
そんな時に円城寺は日常会話のようにさらりと、眉をひそめるような事を口にした。
「なに……を……」
円城寺が素直に喋ったことを、もっとしっかりと警戒すべきだったと思った時には遅かった。
佑月の視界が少し回り、瞼が重くなる。何度も何度も目をしばたたき、それに抗おうとするが。
「二度と私の傍から離れる事は許さないから、覚えておきなさい」
「……ワインに……」
自分の意思に反して、意識が遠くなる。それに必死に抗うが、ついには堪えられず佑月は意識を手離してしまった。
「おやすみ。私の可愛い佑月」
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