335 / 444
油断 3
深い闇に引き摺り込もうと、足元に絡みつく何かから佑月は懸命に抗う。
ふと頭上を見上げると、一筋の光が見えた。佑月はそこに辿り着きたくて、必死に腕を伸ばす。
──もう少し……。
後少しで手が届きそうになった時、佑月の腕が何かに掴まれた。そこで一瞬にして先程の闇が消え、佑月は驚きで重い瞼を上げた。
「目が覚めたかい?」
眩しさに目を細めながら、佑月は声の主に視線をやった。そこには微笑みを浮かべながら、佑月の手を握る円城寺がいた。佑月は咄嗟にその手を振りほどく。
「どういうつもり……っ」
ベッドに横になっていた身体を起こすと、目眩がして佑月は額を押さえた。
「急に起き上がってはいけない。ゆっくりと起きなさい」
「何のつもりですか、これは!」
佑月は怒りで傍らに立つ円城寺を見上げ怒鳴った。
「ここは佑月の部屋だ。これからはここから出すつもりはないよ」
「なっ……」
円城寺の理解不能な言葉に佑月は言葉を失いながらも、部屋をぐるりと見渡した。
円城寺の部屋よりも狭いが、ホテルのツインルームくらいの広さがあり、内装もそれを伺わせるかのように、シャワールームのような部屋があった。
だが、窓が高い位置にあり、しかも小さい。女性でも通り抜けることは困難なサイズだった。佑月は怖気立つ思いで、自身の身体に視線を移した。
スーツの上着は脱がされ、ワイシャツのボタンが全て外れている。スラックスも履いている感触がなく、佑月は恐る恐るとシーツを捲った。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!