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油断 6

 “彼の部屋”というものが、どういう部屋なのかは、もちろん櫻木は知っている。故に、佑月に何かあったのではと、危惧せずにはいられなかったが、櫻木は直ぐに平常心を保った。 「私が留守の間、佑月の食事の管理は任せたよ」 「かしこまりました」  恭しく円城寺に頭を下げる櫻木だったが、その心中は不安と(いきどお)りでいっぱいだった。  午前七時。円城寺は早くから出掛けていき、櫻木は朝食の乗ったトレイを持ち、円城寺の部屋へと入った。  目的の部屋の扉を見つめると、櫻木は奮い立たせるように軽く息を吐いた──。  今は何時なのか、時間を確認出来る物が何一つとしてなく、佑月は沈鬱(ちんうつ)としていた。一分一秒が酷く長く感じて苛立ちも増していく。 「やっぱりあの窓は無理だな……」  ほぼ天井に近い位置にある窓。椅子など乗る物もないため、どう頑張っても無理だ。届いたところで、そこから抜けるのは困難だが。  佑月が頭を悩ませていると、ふいに扉をノックする音が聞こえた。  円城寺は夜まで帰ってこないため、もしかして櫻木だろうかと、佑月は逸る気持ちで扉へと駆け寄った。 「成海様、お食事でございます」 「櫻木さん!」 「成海様、申し訳ございませんが、扉の下部からお渡し致しますので……」 「下?」  その意味を理解し兼ねていると、扉の下部の一部がスライドし、食事の乗ったトレイが、ギリギリ入る位の隙間から佑月側へと差し出されてきた。  佑月は直ぐに膝をつき、トレイを受け取る。まるで監獄に入った囚人のような扱いに、佑月は思わず怒りでトレイを掴む手に力が入ってしまった。   その気持ちが櫻木に伝わったのか、「申し訳ございません……」と詫びる櫻木に佑月は我に返る。

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