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油断 7
もちろん佑月は櫻木に怒ったワケではない。彼は命令されれば、とにかく今はそれに従わなければならない立場なのだから。
「謝るのは俺です。すみません」
「いえ……貴方が謝られることはないです」
佑月が詫びると、櫻木は聞き取るのが難しい程に小さく返す。
そして櫻木の手がトレイから外れる時、その手が何故かトーストの乗った皿を少し横にずらしてから、扉の向こうへと消えた。
「何……?」
そこには小さなメモがあり、佑月は一読し、驚きで目を見開いた。
その内容は、この部屋はカメラで監視されていて、音声も録られているということだった。
しかも、部屋の解錠は円城寺の声紋でしか開かないと。
(嘘だろ……)
衝撃的過ぎる内容に、佑月はトレイを持ったまま暫く動けなかった。
声紋では櫻木に解錠は不可能なうえ、仮に誰かが助けに来てくれたとしても開けることが出来ない。
佑月の全身から力が抜けていき、危うくトレイをひっくり返しそうになる。
「成海様? 大丈夫ですか?」
「あ……」
ぼんやりとしている場合ではない。例え不可能だとしても、動けない状況を彼らに伝える必要があった。
「櫻木さん、お願いがあるのですが、宜しいですか?」
「……何でございましょう」
櫻木の声は円城寺に仕える家令としての、事務的なものに変わっていた。
盗聴されているためだ。
「いま何時ですか?」
「只今、午前七時半でございます」
(七時半か……。タイムリミットまで後五時間)
「そうですか。それで、お手数おかけしますが、暫く休むと事務所に連絡入れてもらえないでしょうか? 十一時前なら従業員はおりますので」
「分かりました。それくらいのことでしたら、旦那様もお許しになると思います。では、またお昼にお食事を持って参りますので、失礼いたします」
扉の下部の小窓が閉じられ、部屋には再び静寂が訪れた。
櫻木の言った通り、あの程度のことなら、例え円城寺に聞かれても問題のない伝言だ。
陸斗らなら、きっと直ぐに佑月の望むように動いてくれるだろう。佑月はそう信じていた。
(頼みましたよ、櫻木さん)
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