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油断 9
「佑月先輩かもしれねぇ」
陸斗が飛びつくように、事務所の電話の受話器を上げた。海斗が陸斗の側に行くと、陸斗は聞こえるように受話器を少し海斗へと向ける。
花は傍で見守る。
「もしもし、お電話ありがとうございます。何でも屋JOATです。ご依頼でしょうか?」
『いえ、依頼ではございません。私は円城寺邸で家令をしております、櫻木と申しますが、突然のお電話申し訳ございません』
「櫻木……さん。あぁ! 所長から伺ってます」
海斗もちゃんと聞こえたようで、二人は頷きあった。
「あの、それでどうかなさいました?」
『はい、実は──』
陸斗は受話器を置くと、海斗と顔を見合わせた。
「マジかよ……。佑月先輩が心配だ。とにかく早く連絡しねぇとだけど、オレあの人の番号知らねぇぞ」
陸斗が嘆くように言うと、花がポンと手を叩いた。
「そう言えば私、滝川さんの番号、焼き肉パーティーの時に聞いて知ってる!」
「マジか! 早く掛けろ」
「うん!」
海斗に急かされ花は急いで電話を掛けた──。
食欲など全くなかったが、櫻木に要らぬ心配を掛けぬよう、佑月は極力食べるようにした。
昼食を終えたのが十二時半頃。恐らくあれから三十分は経ってるはず。
(やっぱり難しいのかもな……)
櫻木はちゃんと、佑月の状況を詳細にメンバーに話してくれたようだ。だが佑月の状況が伝わっても、向こうは簡単に動けないだろう。
自分のせいで、今回の事がふいになってしまうのではと、佑月は気が気でなかった。
そして油断してしまった事が佑月にとって、悔やんでも悔やみきれなかったのだ。
「クソ……なんで……」
佑月はベッドに腰をかけ、項垂れるように頭を抱え、その髪を掻き乱した。
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