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油断 11

 続き間の奥が書斎だとばかり思っていたが、どうやら監禁部屋だったようだ。  円城寺はクローゼットから佑月の鞄を出すと、それを佑月に手渡してきた。佑月は直ぐに中身を確認する。 「心配せずとも、中身は見てないよ」 「そうですか」  見てようが見てまいが、それを今さら知ったところでどうにもならない。  佑月は円城寺の言葉をさらりと流し、黒のスマホの充電の残量がまだ残ってる事を確認してから、ズボンのポケットに入れた。   「佑月、時間がない。いくよ」 「……分かりました」  充電はまだ半分は残ってる。それが今の佑月にとって唯一の心の支えだった。  円城寺がジュラルミンケースを金庫から出すと、それを大事そうに手に持ち、佑月とともに邸の玄関を出た。  玄関口には見知らぬ高級車が止まっている。そしてその傍らに立つ人間を見て、佑月は驚きで目を見開いた。  そして直ぐに警戒するように、相手の出方を窺いながら、佑月は相手を見据えた。 「どうも、はじめまして。成海 佑月さんですね」  流暢だが、少しばかり発音に違和感がある日本語。  つい先日会った時は掛けていなかった眼鏡を掛けているが、間違いない。 【black bird】カラスだ。  まさか円城寺とは素顔を見せ合う仲だったのかと、佑月は緊張で乾いた唇を噛んだ。  なら佑月がカラスに会いに行った事を、円城寺は知っているかもしれないということだ。  佑月に興味があるとカラスが言っていたのも、円城寺から聞いていたからでは。  突然のカラスの登場により、佑月は混乱に陥っていた。 「さて、時間もないですから、車に乗ってください」  頭の整理を行う前に、カラスに乗車を促され、佑月は渋々と後部座席へと乗り込んだ。

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