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油断 13
「そうなのですが、取引は何をおいても、ルールといものがあります。それは貴方もご存知でしょ?」
「それは分かっている」
「成海さんは大事な客人です。危険が及ぶことは決してございません」
「しかし……」
まだ渋る円城寺に、佑月は苛立ちを覚える。
「早く行った方がいいですよ。相手を待たすと大変なんじゃないですか?」
「……分かったよ」
佑月に言われた事でようやく折れたが、円城寺は不満顔を隠さず、何度も振り返りながらも、扉の向こうへと消えた。
カラスと二人きりになるのも遠慮したいが、円城寺と一緒にいる方が息が詰まるため、姿が見えなくなっただけで、佑月はホッとした。
「では、我々は別室にて待機していましょうか」
「ちょっと待って下さい。あなたは“カラス”でしょ……」
二人きりになったことで、佑月は詰め寄るが、その声を遮るように、カラスは人差し指を口元で立てた。
円城寺らに聞こえてはマズイのか、カラスは何やら目配せをする。
佑月自身もこの取引を邪魔する訳にはいかない事を思い出し、カラスへと頷いた。
カラスはそんな佑月に微笑むと、円城寺が入って行った扉とは別の、隣の扉を開けた。
「さあ、入って下さい」
「……」
“彼ら”は本当にいるのだろうか。気配が全くない。スマホもずっと無言を貫いている。
分からないから変に行動が出来ない。それに、その扉の向こうには、カラスの仲間の罠が待ってるかもしれない。
ここをどうにか離れる方法はないのかと、考えあぐねる佑月の足は、一歩も前に出なかった。
「成海さん?」
「あっ……」
カラスが怪訝そうにドアを開けて待つ部屋から、人影が現れる。
その人物を見て、佑月の表情はみるみる明るくなっていった。
「さあ、成海さん入って下さい」
カラスが再度促してくるのを、佑月は今度こそは素直に頷き、部屋へと入った。
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