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油断 14
部屋に入った途端に、佑月は嬉しさで思わずその人物の両腕を掴んだ。
もうこのまま抱きしめたいくらいだった。
「滝川さん、良かった……」
「心配しておりました。無事に出られたのはGPSで確認はしたのですが、お姿を見るまでは、須藤様も不安でいらっしゃいました」
改めてスマホの充電が残っていたことに、良かったと安堵せずにはいられなかった。
「すみません。最後の最後で……。それで須藤さんは?」
「須藤様は成海さんのご無事な姿を確認した後、もう一人の協力者の元へ。ご一緒に行動されてます」
「そうですか……」
と、佑月はここでカラスに顔を向ける。
「じゃあ、彼は……」
「ええ、我々の協力者です」
滝川の言葉にカラスは微笑む。
須藤が誰と繋がっているかなど、今さら驚くことでもないのだが、やはり佑月にとっては少なからず衝撃を受けた。
中立の立場とはいえ、初めは円城寺側としての依頼で、動いていた人物だった故。だがここまで彼らが迅速に動いてくれたのは、櫻木や陸斗らの尽力の賜物だった。ここにはいない彼らに佑月は深く感謝した。
そして佑月のもとへと直接救いに来てくれたカラス。
「あの、ありがとうございます……」
佑月が“カラス”と口を開きかけると、カラスはそれを手で制してきた。
「私は泰然と申します」
「タイランさん」
泰然は佑月に微笑むと、直ぐに表情を引き締める。
「そろそろ取引が始まるようです」
泰然の視線を追いかけると、そこは向こうからもまる見えなどではと言うほどの窓が、横に連なっている。
慌てて身を隠そうとした佑月に、泰然が少し笑う。
「大丈夫です。あちらからはこちらの中は見えませんので」
「見えない……?」
マジックミラーのような物なのだろうかと、思いつつも堂々としていられずにいると、滝川が「大丈夫ですよ」と窓に近づく。
滝川の言う通り、円城寺らは驚くほど近くにいるが、がたいのいい滝川に気付く気配はなかった。
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