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油断 18
「一時 でも、いい思いが出来ただろう?」
「き、貴様……」
怒りを露 に円城寺が睨み付ける相手。佑月は再び、窓にへばりつくような勢いで貼り付いた。
悠然と煙草を吹かし、王者然とした姿の男に、円城寺が負けじと相手を睨み据えているのが、佑月の目に入る。
「なるほど。佑月を奪われたことが余程堪えたようだね。それで私の邪魔を。望みは何だい? 金か」
見当違いな事を言う円城寺の声が佑月の耳に入るが、佑月の意識はずっと相手の男にあった。
食い入るように佑月が見つめる先には、そう、須藤がいるのだ。
姿を見ただけで鼓動が跳ね上がる。やっとあの男の元に戻れるのだと思うと、嬉しくて仕方ないと、佑月の鼓動は代弁していた。
全てを彼に任せてしまっている不甲斐なさを強く感じるが、後もう少しの辛抱だと自分に言い聞かせ、佑月は見守るように須藤から視線を外さなかった。
その時、須藤の影からスッと一人の男が現れた。
「何を眠たい事を言ってるのか。なぁ、仁」
突然現れた男に円城寺の眉が寄る。
「俺の顔を忘れたとは言わせないぞ。円城寺」
「お前は……確か元組対の中村……」
「覚えてくれていて光栄だね」
もう一人の協力者である【espoir】のマスター中村だ。その中村の皮肉を、円城寺は苦虫を噛み潰したかのように、口元を歪ませる。
「組対の中村と、裏社会の王の二人か……ククク……なら、そこの中国人も君らが用意した人間かね」
「あぁ。目障りなマフィアがいると、ある男が言うんでな。潰れてもらうには絶好の機会だろう?」
須藤のセリフに中国人は怪訝そうに眉を寄せ唸っている。自分の意見を述べられないというのは、かなりの苦痛だろう。
「ある男? 誰だ、それは──」
「中村さん、そろそろ連れていきますが、宜しいですか?」
円城寺の言葉を遮り、新たに三人の男らが倉庫内に入ってきた。
「ああ、いいよ。頼む」
スーツを着た男らの三人の人相は、かなりの強面 だ。
だが恭しく中村に頭を下げる男たち。その中の一人が須藤を少し睨むかのように一瞥した。
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