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油断 23
「お願いだから……動かないでくれ……」
佑月の懇願の声は消え入りそうだ。そんな佑月に痛ましそうに眉を寄せながらも、泰然は須藤へと頷いた。
「了解。彼はこちらで処理します。須藤さん、成海さんのためにも死んではいけませんよ」
「俺がこいつを残して死ぬわけないだろう」
「そうですね。では、また」
泰然は身を翻す前に佑月に笑みを見せてから、リアンの元へと行く。
「……イヤだ! 須藤さん……貴方を愛してるんです! 須藤さん!!」
泰然に担ぎ上げられたリアンは、悲鳴のように須藤を呼ぶ。
リアンがこの先どうなるのかは、今は知らない。ただ、佑月にとっては早くこの場から消えてほしかった。
自分のせいだとはいえ、須藤にこんな傷を負わせたリアンが憎くてたまらない。
込み上げる憤怒 をどうにか押さえ込み、須藤の大きな身体を必死に支える。
リアンの姿が消えると、真山が必死の形相で須藤へと駆け寄ってきた。
「ボス、後五分程でヘリが到着します。出血がかなり酷いので、そちらに腰を下ろして下さい」
「大丈夫だ」
「大丈夫ではないです! 二発も撃たれたんですよ! ご自身のことはよくお分かりのはず!」
真山が珍しく声を荒らげる。それほどに主人が心配なのだ。その中で佑月は更に衝撃を受けた。
(二発……?)
「真山」
だがそんな真山を、須藤が咎めるように低く真山の名を呼ぶ。すると、我に返った真山は、佑月を一瞥してから頭を下げた。
「……も、申し訳ございません」
佑月の顔色が相当悪いのか、真山は心底から詫びる。
「二発……って?」
元々、色白な佑月の顔色は更に蒼白になり、今にも倒れてしまいそうな程だった。
須藤はそんな佑月を宥めるように、優しく背中を撫でる。
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