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いつまでも 2
「叔父さん……じゃなくて、父さんとこれから力を合わせて僕らは頑張るから、成海さん見ててね」
「うん、円城寺さんと樹くんなら、きっと立派にやり遂げるだろうね。楽しみだよ」
「ええ」
円城寺と樹、そして櫻木は晴々とした笑顔を見せた。
樹が弘道を父さんと呼んだのは、言葉通り家族になったのだ。
弘道は、樹ら親子の存在を知ってからは、色々サポート等をしていた。そんな温かな存在を、樹の母親もいつしか特別な存在として見るようになったのは、必然なのかもしれない。
もちろん、弘道自身もだ。
円城寺財閥は新たに生まれ変わり、きっと更なる活躍を見せてくれるだろう。佑月はそう信じている──。
円城寺逮捕から一週間が経った今、世間も少しだけ落ち着きを取り戻している。
佑月だけは、余計なことを考える間を自分に与えないよう、仕事に没頭していた。
「陸斗、このあとはビルの清掃だよな? 時間空いたから俺も行くよ」
「え? 行くって……佑月先輩ダメですよ! 最近ずっと仕事詰め込んでるでしょ。休んでください」
事務所内に響く陸斗の咎める声。
仕事に向かおうとした海斗と花も、思わず足を止めた。
「そうですよ、成海さん! 身体壊しちゃいます。真山さんと滝川さんも凄く心配してますよ」
「そうっすよ!」
皆に心配かけてしまってるのは十分分かってる。だけど、そうしていないと佑月自身が壊れてしまいそうなのだ。
「大丈夫だよ。今回のことで、仕事に沢山穴もつくったし、本当、皆にはめちゃくちゃ迷惑掛けた。こんなことで挽回出来ないのは分かってるけど、身体を動かしてたいからさ」
「先輩……」
「成海さん……」
佑月のいまの心情を思い、メンバーは口をつぐむ。
メンバーにこれ以上の心配を掛けたくない思いでの行動だが、空元気でいても、沈んでいても、言い方は悪いが、どちらでもどうせ心配を掛けてしまう。なら佑月は自分は元気だと自身に言い聞かせ、身体を動かしていたかったのだ。
もちろんそれが自分の中で、ただの意地だと分かっている。ただ、今は何も考えたくないのだ。
「分かりました。人手が多い方が向こうも助かると思いますので。でも無理だけはしないでくださいよ」
「ありがとう。無理はしないから」
海斗と花はそれぞれ依頼があり、佑月を心配しながらも仕事へと出掛けていった。
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