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いつまでも 7

「ユヅ、また連絡する」 「うん……ありがと……」  颯とは改めて時間をとって、ゆっくり話したい。  佑月は須藤に肩を抱かれながら【虹】を出る。マスターが心配そうにしていたのを、佑月は気恥ずかしさで頭を下げるだけで精一杯だった。  喫茶店の外には、マイバッハが止まっており、真山が直ぐに運転席から降りてきた。主人のために後部ドアを開ける。 「真山さん……あっ……」  真山に挨拶をしたかったが、須藤に無理やり車内へと押し込まれたため、断念せざるを得なくなる。  いつもの佑月なら、ここで文句の一つや二つは出ているだろう。だが、いまは須藤の具合が気になり、そこまで頭が回らなかった。 「須藤さん、本当に大丈夫なんですか? お願いだから、安静にしててくださいよ……」  須藤が乗り込むや、佑月は直ぐに須藤へと身体を寄せる。 「心配するな。無理しない限り大丈夫だ。お前の顔が見れない方が(こた)える」  ワイシャツの下には、酷い傷痕があるのかと思うと、佑月の心は軋むように痛む。 「見舞いにも行かず、すみません……。俺は助けてもらったのに……薄情な奴だと思われても仕方ないって思ってる」 「それで?」  須藤は、何か佑月の深い部分まで探ろうとするかのような目を向けてくる。それに一瞬戸惑うも、佑月は続けた。 「……須藤さんの反対を押し切ってまで今回のこと進めて、こんな結果に陥ってしまった。まさかこんなことになるなんて、想像もしてなかったとはいえ、俺は須藤さんの命を危うくさせた。後悔などしても遅いのに、後悔ばかりで……」 「だからお前は俺に合わせる顔がなかったと言いたいのか? それでお前はずっと会わないつもりでいたのか?」 「それは違います!」 「だが、お前のやってることはそういうことだろ。こうやって俺から足を運ばない限り会わなかっただろうしな。違うか?」 「……」  須藤の言う通り、そうなのかもしれない。きっと須藤から来てくれると、甘えた考えていたことは否定できない。そして現にこうして会いに来てくれたことに安堵している自分がいる。どこまで卑怯で最低な人間なのか。そんな自分に、とことん嫌気が差してくる。  こんな自分など、須藤にすっぱりと切られても文句など言えない。

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