364 / 444
いつまでも 8
「お前は頑固で時々、融通もきかない。そして何でも一人で抱え込もうとする。責任を感じるのも結構だが、俺の気持ちが少しでも分かれば会いに来たはずだがな……。どうやら俺はそこまで想われてはいないらしいな」
須藤は落胆したように、珍しく長い溜め息を吐き出す。そんな須藤に佑月は焦った。
このままでは本当に自分は切られてしまうかもしれない。つい先程、切られても文句は言えないと覚悟をしたのは誰なのか。
だけどこのまま何もしないで、それを受け入れることは出来ない。
醜態を晒してもいいじゃないか。この男が自分の傍にいてくれるなら、なけなしのプライドなど捨ててしまえばいい。
佑月は決意を固め、須藤の右手を掴むと、そのまま両手で力強く握りしめた。
「違います! 俺は……本当は須藤さんの傍にいたかった。誰に何と言われようとも、ずっと傍にいたい、もう絶対に離れたくない……そんな想いで気が狂いそうだった。でも、こんな状態の俺が須藤さんの傍に行ったら、それこそ退院するまで、病院から離れなかったと思う。そうなったら、メンバーにどれだけ迷惑掛けるか……」
それでなくとも、散々と迷惑を掛けてきた。メンバー三人には最低限の生活を保障しなければならない立場なのに、これ以上身勝手な行動など出来ない。出来るはずもない。
だから理性と感情の狭間で押し潰されそうになりながらも、佑月は仕事に没頭し紛らわした。
「そうやって素直に吐けばいいんだ。お前のその葛藤や想い、それら全部がお前の本音だろ? 全部聞いてやるから、まだ溜め込んでるものがあれば今吐き出してしまえ」
「あ……」
須藤は優しく目を細め佑月を見つめる。
佑月の気持ちを楽にするため、須藤はわざと煽るような事を言ったのだ。辛く苦い想いをしているのは須藤なのに、こんなときでも佑月の気持ちを優先してくれる。
自分のとった言動がいかに稚拙で、自分のことしか考えていないということを、イヤと言うほどに痛感する。
「……須藤さん……優しすぎる……」
「優しいか……。まあ、でもそれはお前限定だがな」
須藤は佑月を右腕で抱き寄せ、その背中を撫でる。佑月の感情は再び高ぶり、ぼろぼろと熱い雫は頬を濡らしていく。
「……ないで……。絶対に死なないで。俺から離れていかないでくれ……お願いだから……約束して」
「ああ、約束する。他には?」
「俺だけを……俺だけを見て……他に目を向けないでくれ……」
「それに関してはな……」
溜め息混じりの言葉。重すぎたのかと思いながらも、否定されたようでショックは隠せなかった。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!