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いつまでも 10
「今夜は身体でもみっちり教えてやる」
「うん……っ!? あ……それは……」
危うく流れに流されそうになり、佑月は我に返ったように直ぐに首を振った。
「ダ、ダメです。絶対安静なんだから、せめて後一週間は大人しくしてないと」
「冗談言うな」
「冗談じゃないし。ほら、早く部屋に入って」
佑月は須藤の傍まで行くと、扉を開けて須藤をリビング内へと押し込んだ。
佑月にリビングへと押し込まれた須藤は少し笑う。怪訝に思った佑月は須藤の顔を覗き込んだ。
「どうしたんですか?」
「いや、お前らしいと思ってな」
「だって……無茶して、傷口が開いたら、それこそ元の木阿弥じゃないですか。真山さんとも約束しましたし」
「真山と?」
須藤は少し驚いたようにしてから「ああ……さっきか」と笑う。
そして佑月の腰を抱き寄せ、そのまま腕の中へと収める。佑月は広い背中へと両腕を回し、お互いの身体を密着しあった。
本当はもっと力一杯抱きしめたいところだが、今はその存在を確かめられる事が幸せだった。
「佑月」
「はい」
見上げると、そこには佑月だけを映す優しく、情熱のこもった熱い目があった。
そして数週間ぶりのキスが落ちてくる。それは啄むような柔らかいキス。
「お前は何も不安に思うことはない。俺は、お前のものだ。しっかり覚えておけ」
「俺の……本当に……?」
「ああ」
「この身体も……」
佑月は須藤の頬を包むように両手を伸ばした。少し震える佑月の手。
「そうだ」
「この心も……」
「ああ、そうだ。全部お前のものだ」
須藤の胸の中心に手を当てると、須藤はその上から手を重ねてきた。
「そして、お前は俺のものだ」
“お前は俺のもの”知り合って間もない頃にもそう言われたことがあった。あの時は何て傲慢で勝手な男なのだと、苛立ったものだ。勝手に所有物扱いされていたのだから、当然と言えば当然だが。
それなのに、今は極上の言葉に聞こえた。気持ちの変化でこんなにも捉え方が変わるものなのかと、佑月は強く実感しながら密かに微笑んだ。
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