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after story 3

『それから』 「え?」  まだ何かあるらしい須藤の声が少し硬い。 『変な依頼は受けるなよ』 「……変な依頼って?」 『男と二人きりになるような仕事だ。分かったな』  当然だろうがと言いたげな声音。というか、この事務所に新たに盗聴器でも付けたかのかと言いたくなるようなタイミングだ。佑月は思わず事務所内をぐるりと見渡した。  しかし相手は高校生だ。しかも親がいるような自宅内では、何も心配するようなことは起きないだろう。でも黙っていても直ぐに須藤にはバレてしまう。なら、一応言っておいた方がいいかもしれない。と、佑月が口を開きかけた時、受話口から通話終了の通知音が鳴った。 「……ちょ……切られてるし」  いつものことだが、自分の要件だけ言って、直ぐに切るのはやめてほしいものだ。 「まあ、何とかなるか……」  ぼそりと呟いたのち、佑月は陸斗と共に一件目の仕事場へと向かった。この家庭教師の件が、また少しややこしい事になるとは、今の佑月には知る由もなかった──。 「まぁ……なんて綺麗な。凄いイケメンでビックリしちゃった! 何だかその辺の男がカスに見える!」 (カスって……)  今日からの家庭教師先の玄関先で、婦人は佑月を見るや、頬を紅潮させ嬉々としている。それに少し圧倒され、佑月は出鼻をくじかれ苦笑いを浮かべてしまう。 「あ……えっと……ご依頼ありがとうございます。今日から宜しくお願いします。成海と申します」 「こちらこそ宜しくお願いします、成海さん。目の保養が出来て嬉しい~」  まだ三十代前半か、二十代後半くらいにも見える若すぎる母親は、結構ミーハーなようだ。  今日から一ヶ月間、土日以外の毎日を午後五時から七時までの二時間勉強を見ることになっている。家は新築のようで、ベージュを基調としていて、豪邸ではないが、おしゃれな外観をしている。  若い母親に、おしゃれな家。一見すると羨ましいと思われる事が多いのでは。その内情がどうなのかは分からないが。

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