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after story 8

「じゃあ佑月先生、教えて欲しい科目があるんだけど」 「なに?」  本当に勉強をしてくれる気になったのかと、佑月は嬉しくなって意気込んだ。 「保健体育」 「保健体育?」  高校生のくせに妙に艶かしい雰囲気を纏って、柾は佑月へと少し身を寄せてきた。 「そ、保健体育。佑月はいま彼女いんのか?」 「保健体育と彼女ってどういう関係があるんだよ。というか、近いし、呼び捨てにするなって」  佑月は柾の大きな身体を力一杯押し退ける。そうでもしないと非力な佑月には、動かせないような体躯をしている。きっと大人へと成長すれば、更に須藤のように魅力的で立派な体躯となるだろう。男としては悔しいところだが……。   「関係あるよ。〝性〟についての勉強だし」 「性……馬鹿言ってないで、ほら、その数学の教科書開いて」  佑月は机の上に散らばってる教科書類から数学の教科書を引っ張り出し、柾の前に置いた。 「チッ。ノリわるいぞ佑月」 「はいはい」  もう名前のことは何度言っても聞かないなと、佑月は諦めのため息を吐いてから、教科書を開いた。 「でも実際どうなんだよ? 彼女いんの?」 「……いるよ」 (彼女じゃないけどな) 「へぇ……」 「なに?」  訊いておきながら、少し面白くなさそうに呟き、柾は佑月の全身に視線を走らせていった。 「いや、佑月みたいなすげぇ美人と付き合う女とか想像出来なくてな」 「想像しなくていいよ。ほら、勉強しよ」  結局初日は、勉強を教えることは出来ず、終始質問攻めにあっていた。家庭教師は建前だとは言われていたが、これが一ヶ月続くのだと思うと、少し気が重くなる佑月がいた。

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