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after story 10
「須藤さん……お帰りなさい」
広いリビングのソファでだらしなく座り、しかもテレビをつけっぱなしで寝てしまっていたようだ。
「ちゃんとベッドで寝ろ。そんな格好で風邪を引くぞ」
須藤はパジャマの佑月にガウンを掛ける。
「ありがとう……。須藤さん待ってたら、寝てしまってたみたいだ」
テレビを消し、リビングにあるデジタル時計を見ると二時半を回っていた。
「寝てろって言ったのに、待ってたのか」
須藤は佑月の隣に座り、ネクタイを緩める。そして煙草を口に咥えた須藤を見て、佑月は須藤の手から高級ライターを奪う。
「つけさせて」
須藤はどうぞと言う風に佑月へと煙草を向ける。火を付けるとジジと葉が焼ける音がする。須藤は旨そうに煙を肺へと送り込んだ。
「ご飯は? 食べて来たんですか?」
「あぁ、少しな」
「そっか」
遅くなると分かってて作ったのは自分だ。だからそれは仕方ないと佑月は須藤へと笑みを見せた。
すると須藤の片方の眉が訝しそうに、ピクリと動く。
「もしかして、作ったのか?」
「え? あ……うん。一人分って結構作るの難しいんだよね。ちょっと余っちゃってて……」
素直に須藤のために作ったと言えない自分に呆れる。
「ふぅん。お前がわざわざ作ったのなら、貰おうか」
「え? 今から食べるんですか?」
須藤は「あぁ」と返事をすると、煙草を灰皿へと捩じ込んだ。それを見た佑月は小躍りしたい気持ちを隠して、直ぐに用意し、ダイニングテーブルに料理を並べた。
椅子に腰を下ろし、箸を持つ仕草。全てを凝視している佑月を目の前に、須藤は先ず豚汁に口を付けた。
緊張で佑月は手のひらの汗をパジャマのズボンに擦りつける。
「美味いな」
「本当!?」
嬉しくて思わず身を乗り出す佑月を、須藤はニヤリと笑ってきた。
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