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after story 14
佑月は急いで踵を返し、息急き切って事務所のドアを開けた。瞬間、陸斗と海斗が待ちわびていたかのように佑月の腕を掴むと、給湯室へと引っ張っていった。
「佑月先輩、あのガキ何なんすか!?」
海斗が小声ながらも憤慨したように、捲し立ててくる。陸斗は黙って般若のような面相だ。久しぶりの二人の迫力に佑月は少し圧倒されてしまう。
「……ごめん、二人とも」
「先輩は悪くないでしょ。あのガキが先輩を呼び捨てにして、偉そうにしてんのがムカつくんすよ!」
どうやら二人の怒りは、佑月を呼び捨てにしていることのようだ。
佑月はもう一度二人に両手を合わせ、謝罪のポーズを取ると、目的の人物の元へと給湯室を出た。
ソファで偉そうに座ってる人物が佑月に気付くと、笑顔を咲かせ腰を上げた。
「佑月! おせぇぞ」
「遅いって……柾くん、何でここに?」
「柾くんって気持ち悪ぃから、柾って呼べよ」
「じゃあ、柾。何でここに?」
佑月は半ばやけくそ気味に呼び捨てにしてから、同じ質問をする。すると柾は嬉しそうな笑みを浮かべると、突然佑月の肩を組んできた。
「佑月を待ってたんだよ。今日は学校が昼までだったからさ。ここ調べて来たんだけど、思ってたよりせめぇな」
「おい! 佑月先輩に馴れ馴れしくすんじゃねぇよ」
海斗が辛抱たまらずといった様に、佑月の肩に掛かる柾の腕を掴むと払いのける。その迫力はやはり極道の血筋と頷ける程のものだった。
「おーこわっ」
だが柾は言葉とは裏腹に、全く恐れる様子を見せない。とんだ肝の据わりようだ。
佑月は海斗に目で謝り、柾の腕を掴んだ。
「ここは職場だ。従業員の邪魔になるから、ここには来ないで欲しい」
過去に……いや現在進行形でもう一人、よく邪魔しにくる男がいるため、佑月はあまり強く言えなかった。
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