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after story 15
「チッ分かったよ。なら、ケー番教えろよ」
柾は着崩した制服のズボンのポケットから、スマホを出すと準備万端とばかりに待っている。そんな柾に今まで黙っていた陸斗が、柾の腕を掴んだ。
「お前、いい加減にしろよ。何を偉そうな口利いてんだ」
陸斗は普段よっぽどの事がない限り、他人に絡むことはない。その役目は海斗がしているからだ。
だが今回は、高校生が佑月を軽く扱う様に、黙っていられなかったのだ。
さすがの柾も陸斗の不穏な空気を感じ一瞬黙るも、絡まれると黙っていられない質なのか、柾からも何やら挑戦的とでも言うのか臨戦態勢に入っているのが分かった。
佑月はこれ以上はまずいと陸斗に掴まれた柾の腕を取った。
「柾くん、ほら、行くよ」
「だから、君付けんなって!」
佑月は双子に片手で謝罪のポーズを取り、柾を外へと連れ出した。
後でちゃんと双子に謝ろうと心に決めて……。
「なぁ佑月、ファミレス寄らねえ?」
「寄らない」
「なに怒ってんだよ……」
柾の家に向かう電車内。少し混み合う車内で、佑月と柾は扉前に立つ。佑月をガードするように立つ柾。どっちが年上か分からなくなる構図だが、痴漢防止にはなっている。
柾は佑月がずっと無口なことが堪えるのか、しきりに話しかけてくる。
怒ってる理由が分からないようでは、まだまだだなと佑月は秘かにため息を吐いた。
「もう事務所には来ちゃダメだよ」
駅に降り立ち、早足で歩く佑月に柾は大股で付いてくる。
「もう行かねぇよ。なんか迷惑かけたみてぇだし……」
「……」
「な、なんだよ」
「いや? 分かってくれてたらいいんだ」
佑月は立ち止まり、少し素直な柾に微笑んだ。そんな佑月を柾はまさに穴が開く勢いで、佑月を凝視していた。
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