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after story 20

 佑月はサッとシャワーを浴び、キッチンへ行くと見慣れないウォーターサーバーがあるのに気付いた。恐らく昼間にでも設置されたのだろう。佑月は遠慮なく水をコップに注ぎ、一気に喉を潤した。  考えないようにしても脳裏に焼き付いた光景は、そうそう簡単には消えてはくれない。須藤のスケジュールを滝川から聞いた時は確かにホッとした。だが、今一人になると再び思考は悪い方へと流れていく。  真山と違い、滝川は終始須藤の側にいるわけではない。全てを把握しているとは言えないからだ。 「はぁ……これじゃ、まんま疑ってることだよな……」  見たのは女を支えるようにエスコートしていた場面だけ。それだけで全てを決めつけてしまうのはどうかとは思う。だが感情がそれに追い付かない。ホテルというのが余計に佑月の中で燻る大きな原因の一つだった。  本人に訊けば一番いいのは佑月とて分かっている。だが、毎日遅くまで疲れて帰ってくる須藤に、余計な面倒事を起こすのも気が引ける。  見なかったことに出来れば一番いいのだけどと、佑月は眠りにつけそうにない中、ベッドへと潜り込んだ。  もぞもぞと何度も寝返りをうつ。今夜は眠れそうにないと佑月は大きなため息を吐き、枕元に置いたスマホを手探りで探す。スマホのバックライトに目を細め、時間を確認した。 「三時……」  まだ帰ってないのかと、佑月が身体を起こそうとした時、リビングから微かな音が聞こえ、佑月は慌ててシーツに潜り込んだ。  須藤が帰って来たのだと思うと、心臓が(せわ)しなく鼓動を打ち、静かな部屋にまで響き渡りそうな程だった。  そして暫くしてシャワーを浴びてきたのだろう、石鹸と、いつもの甘い香りを纏った須藤が部屋へと入ってきた。  直ぐにベッドに入るのかと思いきや、須藤はなぜか佑月側に腰を掛けてきた。  そんな須藤の行動に、佑月はシーツを頭まで被った状態で、緊張で身動きも出来ず息を凝らすしかなかった。  どれくらい経ったのか、須藤が軽いため息を吐く。それが胸にチクリと痛みを走らせ、思わず声がもれそうになった。  必死に堪える佑月の頭に何か温かい物が触れる。直ぐにそれが須藤の手だと理解した。数度優しく撫でると、その手がシーツの上から身体へと辿る。それは欲望を必死に堪えるような手つきだった。まだ自分は求められているのかもしれないと思いながらも、佑月の心情は複雑であった──。

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