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after story 22

 恐る恐ると佑月は須藤へと視線を向ける。たったの二時間くらいしか寝てないとは思えない程の、いつもと変わらない美しい顔がそこにあった。  だがその目の奥は少しの嘘でも見抜ける眼光がある。  佑月はそれを見抜かれるのを怖れて、須藤の厚い胸板に額をつけた。 「ちょっと……疲れてて」  その場しのぎのこんなセリフ、須藤なら絶対に信じはしないだろう。  案の定、無言を貫き、しかも直立不動で佑月の身体に回されない腕。それが酷く胸を痛ませ、佑月は溢れそうになる涙を堪えるために唇を噛んだ。  暫くして須藤が何か諦めのような軽い息を吐き出すと、佑月の身体を優しく抱きしめてきた。 「……っ」  佑月はその拍子に須藤の背中に、まるでしがみつくかのように腕を回した。  今はそれだけでも佑月の心は落ち着いた。それほどに佑月の心は不安定だったのだ。そして自分がどれだけ須藤に強く惹かれているのかを、痛感せざるを得なかった。 「佑月、まだ時間がある。それまで少しでも横になっておけ」  佑月を抱きしめる腕を一度強くしてから、頭を撫で、そして佑月の目線に合わすために須藤は腕を緩めた。  まるで小さな子供をあやすような言動だが、目が合ったその目の奥は、やはり佑月の言葉は信じていないことが分かった。 「うん……」  横になったところで今更眠ることは出来ないが、須藤からの追及から逃れられるなら、大人しくベッドに入る方がマシであった。  マシだが、いつもの須藤なら確実に追及して佑月に吐かせるのに、何故という不安もあり、矛盾した思いが生まれていた。  もう自分のことはどうでもいいのかと、そんな風にまで思ってしまい、そんな女々しい自分に反吐が出そうだった。 「こんな自分が嫌だ……」  シーツの中に潜り込み、佑月は一人呻く。消えつつある須藤の香りが、今は少し辛い佑月がいた──……。

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