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after story 27
「いつも家だと気分が滅入るみたいだから、今日は場所を変えるんだ」
「……そうなんですか。どこでですか?」
陸斗の質問に正直に答えると、きっと二人は過剰に心配するだろう。だから佑月は安心させるように、二人に微笑んだ。
「今日はファミレス。じゃ、待たせてるから行くね」
「……はい。行ってらっしゃい」
佑月は足早に事務所から立ち去る。双子はあまり信じていない顔だった。嘘をつくことに胸が痛むが、仕方ないと自分に言い聞かせるしかなかった。
「へぇ、マジでボロいな」
アパートに着くや、柾は愉しそうにじろじろとアパート全体を眺めている。
「だからそう言ったろ? ほら、早く中入って」
「へいへい」
ご機嫌な様子で中へと入った柾。佑月は鍵を閉めてキッチンへ向かった。コンビニで買ったコーラをコップに注ぎ、ローテーブルに置くと、柾は「サンキュー」と一気に飲んでいく。
「夏場じゃないのに、そんなに喉渇いてたのか?」
「コーラが好きなんだよ」
コップが空になると、柾は徐に立ち上がり、狭い部屋を物色し始める。見られて困るものはないが、あまりいい気はしない。
「なぁ……佑月は彼女と同棲してないのか?」
「え? あ、あぁ……してないよ」
「だよな。歯ブラシねぇもん」
洗面所から顔を覗かせた柾が、佑月の歯ブラシを持って振ると、今度は風呂場を覗いている。
「柾くん、あんまり見ないでよ。綺麗じゃないから」
「変な毛が落ちてないかチェックだよ」
「ちょっ!」
佑月は慌てて立ち上がり、柾の腕を取って部屋へと連れ戻した。毎日風呂から上がる時に軽く掃除してるとはいえ……高校生の行動には度肝を抜かれる。
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