409 / 444
after story 38
まるでどこぞの高級ホテルかのように、全てが豪華な造りとなっている。通された部屋もアンティークの家具で揃えてあり、須藤のマンションの部屋のモノトーンで統一されたものとはまるで違う。豪華絢爛とはこの事だと佑月は溜め息をこぼした。
そしてダイニングテーブルには豪勢な食事が既に整っていた。無駄に大きなテーブルのせいで、須藤との距離は三メートルくらいは離れている。その距離がなくとも、会話らしい会話もなく、ずっと緊迫した時間が流れていた。そのせいで本当なら楽しい時間なのだろうが、全く落ち着く事が出来ず、チラチラとあらゆる場所に視線を泳がせては、佑月はそわそわとしていた。
「なんだ、落ち着きがないな」
須藤の咎めるような声音。それにムッときた佑月は、カトラリーを少し乱暴に置いた。
「これが落ち着いていられますか」
須藤は持っていたワイングラスをテーブルに置くと、佑月を真っ直ぐ見据えたきた。その目に少し怖じけそうになるが、キッと佑月も正面から見据えた。
「ちゃんとどういう事なのか、説明してください」
「説明など必要ない」
すげなく一蹴されるが、ここで引くわけにはいかない。
「必要です。一週間もなんて、どうかしてる。せめて電話させて下さい」
「監禁されてる身が何を言ってる」
「か……」
白目を剥きそうになるのを必死に堪え、佑月は自身を落ち着かせようと、大きく息を吐き出す。
「じゃあアンタは? 仕事大丈夫なんですか?」
「あぁ、今日のために詰め込んできたからな。心配するな」
「……」
何か今、とても聞き捨てならない事を須藤は言った。佑月は唖然としてしまい、暫く口が半開きになっていた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!