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after story 42

 階段を上がる時も、佑月の心臓は自分は緊張しているのだと、忙しなく主張してくる。なにせ須藤とセックスするのは、無理やりされたあの日以来。マンションにいた時は、佑月の欲を解放はしてくれたが、まともに抱き合うのは一ヶ月ぶりくらいになる。だから、妙に緊張してしまうのだ。 「なんだ緊張してるのか?」 「べ、別にしてないけど?」  照れ隠しによる強がり。むろんそんな佑月を須藤は笑う。 「シャワー浴びての時間稼ぎも出来ないからな」 「だからしてないって」  須藤の言うとおり、シャワーはここに着いて部屋に通されたとき、柾が触れた場所を綺麗に流せと、シャワー室へと突っ込まれたため済んでいる。確かに表面は綺麗になったが、感覚はまだ消えない。だから早く須藤に触れて欲しいという思いも強い。だが隣を歩く須藤は緊張などしないのだろうなと、佑月は少し悔しくなる。  部屋に入ると、真っ先にキングサイズのベッドが目に飛び込む。いつまで経っても余裕の態度で、bar並みに取り揃えられた豊富な酒が並ぶ棚へ向かう須藤の腕を、佑月は掴んだ。 「どうした?」  優しく問い掛けてくる須藤。その優しさが更に須藤には〝緊張〟というものが無いということが分かる。須藤とて相当溜まってるはずなのに、この余裕は何処からくるのか。 「酒なんていいから、ほら、脱いで」  そう言いながら、佑月は須藤のベストの釦を外し、ネクタイも取り除いた。大人しくされるがままの須藤。ベストを脱がせると、今度はシャツの釦に手を掛けた。脱がせる行為は女性で経験はあるが、須藤相手だと官能的な空気がより濃く増す気がして、更に緊張が高まってしまった。  そこで須藤が笑う気配。何で笑うんだと言う意思を込めて見上げると、膝裏に腕を通され、そのまま抱き上げられた。 「ちょっ……だから須藤さんダメだって! まだ万全じゃないでしょ!?」 「人がせっかく緊張を解いてやろうというものを」  佑月を静かにベッドへ下ろすと、須藤は自身のシャツとベルトを取り、ベッドの下へと放った。

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