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after story 53

 微睡(まどろ)みの中、髪を撫でられる感触に、佑月は重い瞼をゆっくりと上げた。うつ伏せで寝そべっているらしい自分。佑月が視線を上げると、そこには愛おしそうに自分を見つめる男がいた。 「い……ま……ゲホッゲホッ……」  喘ぎ過ぎて声が掠れ、噎せる佑月の背中を須藤は無言で撫でる。  いま何時なのか知りたいのに、声が上手く出せない。そして直ぐに感じる身体の異変。何か重いものが佑月の背中にのし掛かってるような感覚。起き上がろうとするのに、身体が動かない。少し身体を捻ろうと思えば腰が悲鳴を上げる。 「っ……」  須藤が直ぐに佑月の身体を仰向けへと寝かせてくれた。その時に窓の外が明るいことを知った。眩しさで目を細める中、須藤がシャツにスウェットパンツというラフな格好でいるのが目に入る。ふと自分の身体がやけに開放的なことに気付き、佑月は重怠い腕を動かし上半身に触れた。触れるのは地肌。そしてその腕を下腹部へ持っていくと触れる茂み。どうやらまだ全裸のようだ。 「何か飲むか?」  須藤はそう問い掛けながらも、佑月の素肌に指を滑らせている。それは十分に官能を含んだもの。だからその度にビクリと反応してしまう身体。だが今はもう須藤に応えられる体力はない。だから佑月は須藤の問い掛けに素直に頷いた。  部屋を出ていく須藤の後ろ姿を見送り、佑月はそっとシーツに触れた。触れるはずのベタつきがなく、ピンと張ったシーツ。自身の身体も、尻の違和感以外に不快感はない。佑月の身体を綺麗に拭き、シーツは新しく替えたのだろう。だが裸のままではやはり抵抗がある。上掛けのシーツを手探りで探したが、一向に手に触れる気配がない。どうやら無いという現実に項垂れそうになる。 「す……どう……」 「何だ?」  グラスに注がれた水を片手に戻ってきた須藤は、佑月の身体を起こす。大きな枕に背を預け、グラスを受け取るが、まだ震えが残り水が零れてしまう。 「あ……」  須藤は佑月の手からグラスを取ると、そのまま口へと水を流し込んできた。喉が一気に潤っていく。 「ありが……と」 「まだ飲むか?」 「いい……。あと……服ほしい……」 「必要ない」  間髪容れずに言われて、佑月は直ぐに言葉が出てこなかった。

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