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after story 54
「必要……ない? え……いや、じゃあせめてシーツを」
「それも必要ない。お前はずっとそのままでいろ」
「そ、そのまま!? ……ケホッ」
思わず叫んで、本調子ではない喉にやられる。
外は寒そうに木枯らしも吹いている。しかしこの部屋は空調管理も完璧で、裸でいても風邪を引くことはなさそうだ。行為中にかいた汗も須藤が拭ってくれたから、寒気も感じない。だけどだ。だからと言ってずっと裸のままでいろとは何の冗談なのか。佑月は信じられない思いで須藤を凝視する。
「その冗談笑えない。いいから羽織るもの下さいよ」
「忘れたのか? お前は監禁されてる身だ。この部屋からも一歩も出さない」
「……」
忘れてはいない。だけど周辺は誰もいない山奥。それだけでも十分に監禁の演出は出来ている。だから監禁とはただの比喩的なものだと思っていた。それなのに、この部屋からも出さないと言われると、冗談ではなく本気なのだと思い知らされる。
「いつでも直ぐにお前を抱きたいからな」
佑月の顎を掬い上げてから喉元を擽るように触れられ、佑月は敏感になった肌のせいで感じてしまうことを避けるために身を捩った。
「俺は……ダッチワイフじゃないし」
「当たり前だろうが。何度も言わすな。お前だから抱きたいんだ、佑月。こうしてる今も抱きたくて仕方がない」
この男は本当に狡い。そんな事を言われれば、嬉しくないはずがない。ずっと女を抱いてきた男が、男である自分を強く求めてくる。
男の矜持とか今さら言っても仕方がない。抱かれることに悦んでいる自分がいるのだから。
「でも……さすがにずっと裸ってのは……恥ずかしいし、部屋に閉じ込められるのは気も滅入るから……」
「自由がないことが監禁だ。この一週間は他の事は考えず、俺だけを見て、俺のことだけを考えていろ」
「そ……」
反論しようとしたが、佑月は口をつぐんだ。傲慢とも言える言動だが、きっと円城寺の件、柾の件の戒めもあるのかもしれない。須藤にしてみれば我慢を強いられ、しかも男を軽率に家へ上げてしまい、裏切るような真似をした。だから自分は、その報いを受けなければならないのだろう。少しの理不尽さは感じるが……。
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