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after story 55

「……分かりました。仰せのままに」  投げやり気味な返答にも須藤は気を良くしたのか、佑月の唇に軽くキスなど落としてきた。ここには二人しかいない。機嫌を損ねて空気が悪くなるのも御免だ。だから須藤に従ってる方が利口だと言える。 「あの、いま何時?」 「時間(それ)も忘れろ」 「……」  徹底してる。  この部屋にはテレビもない。スマホはアパートにあるから、時間を知る(すべ)がない。佑月は半ば感心さえした。 「そうですか……」 「腹減ってないか?」  そんな佑月を宥めるように、抱き寄せた肩を撫でながら須藤は問い掛けてくる。佑月は黙って首を振り、その腕から逃れるために須藤に背を向けて横臥した。 「……何か食べたくなったら直ぐに言え」  そう言うと須藤は部屋から出ていった。それを横目で見ていた佑月は、須藤の姿が見えなくなると、途端に大きなため息をこぼした。 「はぁ……マジか……」  身体を動かすにはもう少しの時間が必要だ。こんな生活を一週間も続けたら、身体が(なま)るどころの話ではなくなりそうだ。歩きたい。こんな自然の中にいるのだから、外の空気を吸いたい。きっと身が凍えるほどの寒さなのだろうが、それすらも今は恋しい。まだ1日目だというのに、早くも音を上げそうだった。  それから須藤は幾度(いくたび)部屋を出入りしている。その度に手に持っている書類が増えていく。部屋にはソファとローテーブルもあるため、そこで何やら書類に目を通しては部屋から出ていくを繰り返してる。 「ねぇ、もしかして仕事してるんですか?」  ベッドから問い掛ける佑月に、須藤は書類から顔を上げた。そして書類をテーブルに置くと、佑月の傍へとやって来る。

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