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after story 58
「天候のことまで、俺にはどうしようもない」
「あ……」
自分の思いが見透かされ、佑月は本当に自分が馬鹿だったと俯いた。
「ごめん」
謝る佑月の肩を須藤は黙って抱き寄せる。
「何だか……雪見たら寒く感じる」
佑月は須藤の広い背中へと両腕を回し、胸にすり寄るようにして身体を密着させた。甘い香りが欲情を煽るが、それよりも安心出来る。そして何より温かい。
「身体が冷えてきたか?」
須藤は佑月の肩から背中、上半身を確かめるように擦る。
寒くはないが、どうしようもない自分を包んで欲しかった。本当にいつまでも甘えたで自己中だ。須藤のことなど言えた義理ではない。
「温めてやる」
そんな佑月は須藤にとっては可愛いのか、冷えてもいない佑月をそっと抱き上げると、ベッドへと寝かせ身体を重ね合う。甘く深いキスを受け止めながら、佑月は須藤がシャツを脱ぐのを手伝った。
「しごと……いいの? あ……」
「いい」
挿れることはしないで、互いの身体を愛撫し合い、性器を擦り合わせる。お互いの傷痕には優しく触れ合う。まるでじゃれ合う一時。須藤と身体を重ね合う中で、こんなことは初めだった佑月は、何だか妙に嬉しく幸せだった。
「佑月」
「ん……や……変なところで喋らないで」
須藤の吐息が佑月の宝珠にかかり、擽ったいのと羞恥とで身を捩る。
「俺の名前、覚えてるのか?」
「え?」
突然の妙な問い掛けに、佑月は思わず上半身を起こした。
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