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after story 63
「なんだ? まだ足りないのか?」
「え!?」
須藤に頬を撫でられ、佑月は飛び上がらんばかりに驚く。
「そんな熱い視線で見てくるなど、お前もなかなか──」
「ち、違うし。足りないとか、何処をどう見たらそう見えるんだよ。ただ、あんたは平気なのかと思っただけだから……」
人の下半身をじろじろと見ていた気まずさで、佑月は目線を泳がせた。
「平気?」
「う、うん。あんなに何度もやって、その……痛くないのかなぁと」
(って、何訊いてんだよ俺は)
口から勝手に言葉が飛び出してくる。咄嗟だと全くもって落ち着いた言葉が出てこない。いつまでもこの様で佑月は恥ずかしくて、顔が熱くなった。
「あぁ……」
そんな佑月に、いかにも冷やかすような笑いを含んだ返事がくる。チラリと上目で須藤を見ると、須藤は案の定ニヤリと口角を上げていた。
「痛いどころか、気持ち良すぎたが?」
「あ……あぁ、そう……」
これも経験値の違いか。どうやらアソコも鍛えられるらしいと、馬鹿な事まで浮かんだ自分に更に赤面する。
「まあ、お前には無理をさせてしまったがな」
「……そうだよ。こんなこと二度とごめんですよ。体力差ってものを考えてくれよ」
赤面を誤魔化すために、わざとつっけんどんに言う。そんな佑月の眼前が不意に暗く翳る。驚く間もなく唇を吸われた。
「ちょっ……危ないじゃないですか!」
「可愛い事を言うからだ」
「か、かわい……何言って……」
まるで付き合い立ての中学生カップルのような感じだ。あんなに凄い行為をしておきながら、こんな不意打ちの軽いキスが恥ずかしい。
佑月の顔の熱は暫く治まりそうになかった。
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