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美しい人 5
それを聞いた高田は心底にホッとした。何故なら、あまり人目に付きたくなかったからだ。
ここは大通りから逸れて、入り組んだ住宅地に紛れ込むようにひっそりと建っているような喫茶店だ。ここなら外界とは違い、多くの人目に触れることはない。そして喫茶店の客も常連客なら怪しい者がいれば目立つし、安全な場所と言えた。
本来ならば事務所へ訪ねなければならないところを、成海は高田の気持ちを汲んで、わざわざこの喫茶店を選んでくれたのだ。
「では、早速本題に入らせて頂きます」
先程までの和やかな雰囲気から一変、成海の顔つきはまさに仕事モードの引き締まった、隙のないものへと変っていた。
「はい」
「お電話でも申し上げました通り、うちは違法ドラッグ、銃器など犯罪に関わるものなどは一切お断りをしています。その点を踏まえてのご依頼ということで宜しいですね?」
成海は念を押すように、厳しく鋭い目付きで高田を見据えてきた。美しい人間の鋭い目付きはどうしてこうも迫力があるのだろうか。
高田は緊張で喉がカラカラになりながらも、成海の目を見て返事をした。
その返事に心持ち和らいだ成海の目元に安心した高田は、懐から手のひらに収まる小さな物を取り出し、成海の前へとテーブルに滑らせた。
「これです。一週間だけ預かってて欲しい物は……」
「失礼します。ライターでしょうか?」
一見すると高級ライターのような物。高田は首を傾げた。
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