6 / 444

美しい人 6

「友人から預かった物です。ライターだとは思うんですが、詳しい事は聞いても答えてくれなくて……。ただ仕事中まで持ち歩くのは確実に無くしそうで……」  自分にこれを預けてきた中学時代からの友人、松村 光はどこか鬼気迫るものがあった。  松村はホストをしており、仕事柄、高級ライターは珍しくもない物のはずだが、何か彼の焦りを感じた。結局勢いに負け、預かってしまったのだが、本当は少し怖くなったのだ。  貸金庫に預ければいいのだろうが、きっと一人で抱え込むよりも、面識のない他人で、尚且つ信じられる者に縋りたかったのかもしれない。 「なるほど……」  成海が涼しげな目元を伏せ、ライターをじっくりと観察をしている。 「あ……」 「どうかしました?」  ライターの蓋を開けたり閉めたりしていた成海の手が止まったのを見て、高田は首を傾げた。 「これ……USBメモリですね」  そう言って成海がライターの蓋の部分を横にずらすと、パソコンへの接続口、USBポートが現れた。 「USBメモリ……? 何でそんなものが……」  高田の頭は混乱していた。  一体このUSBには何のデータが入っているのか。何か考えたくもないものに巻き込まれたような気がして、高田の顔から血の気が引いていった──。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!