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美しい人 6
「友人から預かった物です。ライターだとは思うんですが、詳しい事は聞いても答えてくれなくて……。ただ仕事中まで持ち歩くのは確実に無くしそうで……」
自分にこれを預けてきた中学時代からの友人、松村 光はどこか鬼気迫るものがあった。
松村はホストをしており、仕事柄、高級ライターは珍しくもない物のはずだが、何か彼の焦りを感じた。結局勢いに負け、預かってしまったのだが、本当は少し怖くなったのだ。
貸金庫に預ければいいのだろうが、きっと一人で抱え込むよりも、面識のない他人で、尚且つ信じられる者に縋りたかったのかもしれない。
「なるほど……」
成海が涼しげな目元を伏せ、ライターをじっくりと観察をしている。
「あ……」
「どうかしました?」
ライターの蓋を開けたり閉めたりしていた成海の手が止まったのを見て、高田は首を傾げた。
「これ……USBメモリですね」
そう言って成海がライターの蓋の部分を横にずらすと、パソコンへの接続口、USBポートが現れた。
「USBメモリ……? 何でそんなものが……」
高田の頭は混乱していた。
一体このUSBには何のデータが入っているのか。何か考えたくもないものに巻き込まれたような気がして、高田の顔から血の気が引いていった──。
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