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怪しい依頼 2

 現場を思い出したのか、弟である海斗が口元を押さえ渋面を作る。兄の陸斗も額に手をやり、顔を歪ませる様子を見た佑月は、思わず現場を想像し眉を寄せた。 「うわぁ……それは大変だったな。本当にご苦労様でした」  佑月が労いの言葉を掛けると、二人は嬉しそうに顔を綻ばせた。  愚痴をこぼすことも多いが、決して仕事では手を抜かない二人。佑月はそんな二人を信頼し、様々な仕事も任せてきた。  西内 陸斗、海斗は一卵性の双子で傍目では見分けがつかない程にそっくりな兄弟。今は二人、髪をツンツンに立たせ、陸斗は赤髪、海斗は金髪の髪色で見分けやすいが、佑月はそれがなくても見分けることが出来た。  それは高校、大学ともに一緒で、一つ下の後輩だったからだ。もう彼らとは約八年程の付き合いになる。その年数のお陰で、彼らの微妙な顔の違いや、些細な癖や性格も手に取るように分かると自負さえしていた。  高校時代、同級生に暴行されかけていた佑月を救ってくれていなければ、出会わなかっただろう二人。恩人とも言える二人に懐かれてしまい、現在に至っている。  でも佑月にとっては可愛い後輩なのだが、この二人を取り巻く環境は、決して可愛いとは言えなかったりする。何故なら二人の祖父は、関東で勢力を伸ばす、構成員数百人からなる指定暴力団、正厘会(せいりんかい)の会長だからだ。  そして正厘会系列の二次団体、西内組の組長をも親に持つ筋金入りのやくざの家系だ。  しかし、陸斗と海斗は稼業には全くの興味がないため、家を離れ、なけなしの給料で安アパートを借り自立をしている。  なけなしの給料……これは佑月も本当に申し訳ないと思っている。満足いく手当ても出せずにいる自分に、文句も言わず付いてきてくれる二人には感謝してもしきれなかった。  情けない自分に溜め息を吐き、佑月は二人に飲み物を入れる為に給湯室へと腰を上げた。

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