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怪しい依頼 3
「佑月先輩、オレら汚いんで着替えて来ます」
「ああ、了解」
事務所の隣の部屋は空き部屋だった為に、更衣室に充てている。二人が更衣室に入るのを見てから、佑月は給湯室へと入った。
あの二人は厳 つい顔に反して、年中いつでもお茶を好んで飲む。
爺さんみたいだと、そんな二人を可愛く思いながら、佑月は棚から玉露の茶葉が入った缶を取り出し、急須にポットのお湯を二人分入れた。
二人の湯呑茶碗にそれぞれお湯を注ぐ。これはお湯を冷ます為だ。
玉露は熱湯を入れると苦味、渋味が強くなり、玉露本来の美味しさが損なわれるからだ。
「あー! 成海さん! あいつらのお茶なんて私が淹れますのに!」
眉を吊り上げ、息を切らせながらスーパーの買い物袋をドッサリとテーブルに置く女性。
【J.O.A.T】オフィスのもう一人の従業員、徳田 花。彼女は、陸斗たちの幼なじみだ。
「花ちゃんお帰り。買い物ありがとう」
佑月が微笑むと花の顔は一瞬で赤くなった。そこがまた可愛らしい。色白で、ぱっちりと大きな目は小動物の赤ちゃんのようで、ほとんどの男が守ってやりたくなるタイプと言える。
「た、ただいまです……。あの、二人は?」
「ああ、今着替え中だよ」
「そうですか」
一瞬で厳しい顔つきになった花を見て、佑月が口を開けようとした時。
「陸斗! 海斗! あんたら何様よ! 成海さんにお茶淹れさせるなんて!」
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