10 / 444
怪しい依頼 4
派手な音を立て、更衣室を開ける花に佑月は慌てる。
「花ちゃん! これは俺が勝手にやってることだから」
いつものことだが、怒り心頭に発した花には、佑月の声さえも耳に入らない。
(頼むから聞いて欲しい……)
「ちょっお前開けんなや! 着替えてんだろうが、この変態!」
「はあ? なに女みたいな事言ってんの! アホか!?」
「ちょっとちょっと、花ちゃん落ち着いて」
今にも取っ組み合いを始めそうな双方の間に、佑月は身体を滑り込ませた。
「だって……こいつら身の程知らずもいいところですよ。成海さんに……成海さんにお茶淹れてもらえるなんて……」
泣きそうな顔で「羨ましい」と吐き捨てた。
相変わらず酷い言われようの二人。
佑月は思わず笑いそうになりながら、花の背中を優しく撫でながら目を細めた。
「それじゃ、花ちゃんにも淹れてあげるとしますか」
「ほ、本当ですか!? あ、いや……でも、やっぱり私が淹れます。すみませんお恥ずかしいところを」
我に返ったのか、花は急にペコリと頭を下げ、そそくさと給湯室に入って行った。
「佑月先輩すみません」
頭を下げる双子に、ゆっくり首を振って扉を閉め、佑月はこっそり溜め息を吐いた。
佑月が絡むと何故か時々騒がしくなるメンバーだが、【J.O.A.T】のメンバー四人は仲良くやっている──。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!