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危険な男 3
両脇から二人に腕を掴まれ、エレベーターから降ろされる時、佑月は無駄だと分かってはいたが足を踏ん張り抵抗してみた。が、やはり直ぐさま痛い程に腕を掴まれ引っ張られてしまう。
「んー」
「無駄な事はしない方がいいですよ。ケガするだけです」
人に恐怖を植え付けるのに十分すぎる程の低く感情の籠らない声が、右上から降ってくる。
(クソ……)
布を噛まされているため舌打ちも出来ず、苛立ちも増していく。
一体何者なのか。佑月に異変があった事を気付く者は、明日の昼前にならないと気付かれないという悲しい現実がある。
兄弟はいないし、母親は小学生の時に亡くし、父親も佑月が生まれてすぐに死んでいる。
崖っぷちに立たされ、どうにか助かる方法がないかと考えを巡らせてみるが、ここが一体何処なのかも分からない。
車に乗っている時間も目隠しされていたせいで、感覚も鈍っていて正確な時間は分からない。わざわざ目隠しをするなど、よほど場所を知られたくないらしいが。
「失礼します」
ノックと共に、前にいる男がそう告げると扉が開く気配。いよいよ逃げる事は不可能な状況に、佑月は追い込まれてしまった。
「……っ!?」
突然、佑月は背中を押され突き飛ばされる。どっさりと倒れ込んだのは、どうやらソファの上らしい。革張りのシートが頬に貼りついた。
慌てて身体を起こそうとした佑月だったが、両手の枷 で上手くいかない。身動 ぎする両足を無情にも掴まれ、佑月は焦った。
冗談ではなかった。これ以上動きを封じられるなど最悪すぎた。
佑月は暴れてみるが「大人しくしろ」と髪が抜けそうな程の強い力で掴まれた上、身体も押さえつけられてしまう。
「んんー……ん!」
手早く足枷まで付けられ、完全に動きを封じられた事により、今更恐怖で佑月の身体は震え出した。
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