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危険な男 8
ここで死んでしまうのなら、最後に陸斗や海斗、花に会いたかった。
いや、会わない方がいいのかもしれない。余計に三人から離れる事が悲しくなって、未練が残ってしまうのかも。佑月が悶々とそんなことを考えていると、不意に手と足の枷が外された。
「……?」
どうしたのかと訝しんでいると、更に口元の布と目隠しとが外され、佑月は暫く呆然としていた。
「着きました。降りて下さい」
「え……?」
隣に座っている手下の男に顔を向けると、顎でしゃくられ、佑月は怪訝な面持ちで窓の外を見た。
「……海は?」
思わずそう呟いていた。
なぜならそこは……。
当然、手下の男は怪訝そうに眉を寄せてくる。
「海? とにかく早く降りて下さい」
終始丁寧な口調を崩さない男は、無表情で促してきた。
赤いテールランプを佑月は呆然と見送る。
「……どういう事だよ……」
降ろされたのは、そう、佑月の自宅である安アパートの前。喜ぶべきなのだろうが、妙にあっさりと解放され、手放しで喜べる状況ではなかった。
佑月は辺りを警戒するように、とりあえずとアパートの中へと入って行った。
あの男は一体どういうつもりで自分を解放したのか。このままで済むわけにはいかないはずなのなに。
考えていることが分からない上、色々と油断ならない。安心なんて出来たものではなかった。
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