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絶体絶命

◇ 「おっはようございまーす!」  午前十時半前。【J.O.A.T】オフィスの営業開始時間は十一時からだが、今日は早くに出勤してきた双子。 「おはよう」  事務机に駆け寄ってくる双子を、佑月は笑顔で迎える。 「佑月せんぱーい! 今日も朝から爽や……あれ? なんか顔色悪くないですか?」 「ホントだ」  海斗と陸斗は心配そうに、佑月の顔を覗き込んできた。 「え、ほんと?」  昨日あんなことがあったわりには、佑月は結構ぐっすりと寝ていた。 (疲れが取れてない? え……やっぱ歳……なのか? 二十五なのに……) 「傍目では分かんないでしょうが、オレらの目は誤魔化せないですよ」  不意に陸斗が佑月のおでこに手を置き、自身のおでこにも手を置いた。 「んー……熱はないみたいですね」 「風邪は引いてないから大丈夫だよ」  佑月は苦笑いになりながら、陸斗の手を外した。 「そうですか……?」  半信半疑の様子で見てくる二人に、佑月はしっかり頷いた。  そんなに病弱系に見えるのだろうか。いつも過剰な程に心配してくる二人を安心させる為にも、もっと鍛えた方がいいのか。  身体を動かすことは好きだが、なぜか佑月の身体は思うように筋肉が付かない。  見事に鍛え上げられている双子の身体をこっそり見て、佑月は溜め息を溢した。 「あのさ、それより……二人に訊きたいことがあるんだよ」  少し緊張の混ざる佑月の声に、二人は顔を見合わせた。 「何ですか? 何でも訊いて下さい」  陸斗が言う。 「うん、ありがとう。それで、二人なら分かると思うんだけど……。須藤っていう男の名、聞いたことあるか?」  昨日佑月を拐った男。あの男を突き飛ばした時に、手下の男がと呼んでいたのを佑月は覚えていた。  裏社会に関しては、この双子から聞くのが一番。案の定二人は大きな反応を見せた。 「え、須藤って……まさかあの須藤ですか!?」  海斗が驚いた様子で大きな声を上げた。陸斗も何やら難しい顔でいる。 「多分、海斗の知ってる須藤と同一人物だと思うんだけど、歳は三十代の半ばくらいに見えたかな」  そう言うと、陸斗が小さく何度も頷き口を開く。 「もしかしてその男、背がでかくて、妙に威圧的なオーラもあって、しかも無駄に男前だったりしませんか?」 「まあ……確かにハンサムだったかな」  悔しいが、確かに女には一生困る事はないだろうと思ったほどの美形だった。 「やっぱりあの須藤だ」  海斗が言うと陸斗は頷いた。 「須藤って男、あのルックスだから、毎日毎日違う女とか連れてて、次の予約が何十年先までも入ってるって噂らしいですよ。ホント羨まし過ぎてムカつくぜ」  最後は憎々しげに吐き捨てた海斗。  その横で陸斗は、怪訝な表情で佑月を見つめてきた。

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