25 / 444

絶体絶命 4

「すみません……。みっともない所をお見せして」  ようやく落ち着いたのか、高田はばつが悪そうに頭を掻く。そんな高田に佑月は首を振った。 「高田さん、このUSBメモリはどうされますか?」  佑月は内ポケットから取り出したUSBメモリを、高田に見せた。 「それはもう、オレには必要ないものです。返す相手がいなくて……」 「え……いないって、どういうことですか?」  高田がこんなに酷い目に遭ってるのだ。それを預けた張本人が、無事でいられるわけがないかと、佑月は唇を噛んだ。 「いえ……光は……。あ、えっと、光はオレの友達で松村 光って言うんですけど、光は一応無事です」 「一応?」  高田は苦笑して頷く。 「光とは中学時代からの友達で、オレと違って社交的でイケメンで、とにかく目立つ奴でした。そんな光となんで友達になったのか、自分でも不思議なんですけど、なんか気が合ったんですよね……。そんな光が大学卒業とともに、直ぐに水商売を始めました」 「ホスト?」  高田は頷く。 「heavenっていう店で一応No.2でした。だけど、そこのオーナーとどうも折り合いが悪くてよく愚痴ってました。いつか絶対に辞めてやるって言うのが口癖だったんです。だけど……あの日、オレが成海さんにそれを預けた日に光が家に来たんです」  高田が佑月の手の中にあるUSBメモリに視線を遣る。 「なんか凄く焦ってて、突然『店を辞めてきた。お前とは暫く会えない』とか、言うだけ言って直ぐに帰って行きました。もちろん心配だったので直ぐに電話しました。だけど……その日から電話には全く出ないし、家にもいない、実家にもいない。店にも電話したら本当に辞めたって言われて……」  高田はそう言って、悲しそうに睫毛を伏せた。 「そんな時、昨日奴らが来たことで光の居場所が分かったんです」 「何処に……」  緊張のせいで佑月の鼓動が速くなる。 「警察でした」 「警察?」 「はい。覚醒剤所持で自ら自首したそうです」 (覚醒剤……。でもなんでわざわざ自首をしたんだ?) 「あの男が言うには、あのUSBメモリは光が盗んだものらしいです。しかもその盗んだ相手がオーナーだったと言ってました。だけどそのオーナーもまた、自分の店のケツ持ちであるやくざの若頭から盗んだらしいです」 「え!?」  確かに昨日須藤は、高田の連れが盗んだと言っていた。しかし一体何がどうなってるのかが理解出来ない。 「そのオーナーは、自分のケツ持ちのやくざが、USBメモリの取引をする電話を聞いていたらしく、隙を見て盗んだようです。どうやらオーナーは陰で裏切って、他の組のやくざと繋がってたらしいですよ。それを横流しにするためオーナーは盗んだみたいですが、そこを光が、嫌ってたオーナーを嵌めようと盗んだみたいです。それをオレに預けてきて……」 「なるほど……」  これで大まかな事が分かった。  松村は怖くなって、警察に行ったのだ。そこならば確かにやくざも手が出せないし、安全な場所かもしれない。  改めて須藤の情報網の凄さを思い知らされた。 「成海さん……。光がいなくなった事を直ぐに連絡出来ず、すみませんでした。本来ならそこでこの依頼は解消出来てたのに……。そしたらこんな風に、成海さんを巻き込む事はなかったのに……」  高田は佑月に深く頭を下げてきた。 「大切なお友達が急にいなくなったんです。高田さんも色々と大変だったはずですから、気にする必要なんてないですよ」  佑月がそう告げると、高田はまた泣きそうに顔を歪めた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!