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絶体絶命 5
高田の口から聞いた情報に、佑月は深い息を吐いた。それならば、このUSBメモリを持っているのは極めて危険ということだ。
そんな危険な物を高田に託すわけにはいかないと、佑月がそっとUSBメモリを内ポケットに入れた時、インターホンが鳴った。
「誰だろ? 成海さん、ちょっとすみません」
そう言って高田がドアを開けに向かうのを、頷いて見送る。ちょうど玄関に背を向けて座ってる為、来客の顔は見ずに済む。
その時、耳をつんざく程の大きな音がし、佑月の身体が驚きで跳ね上がった。
「うっ……」
「高田さん!? どうし──」
咄嗟に振り向き、立ち上がろうとしたが、一瞬動きが止まってしまった。
大きく放たれたドア。その玄関先で高田は男に首を掴まれ、赤い顔で苦しんでいた。高田の爪先が少し浮いている。
「よおー高田さん、こりゃ見事な面だな。ま、んなことより、オレらに渡すもんがあんだろう? あん?」
高田の首を掴んでいる男は、陽気な声で言いながら首を締め上げている。その男の後ろには三人の男がいた。
揃いも揃って人相の悪い男たち。やくざに違いないだろう。佑月は急いで立ち上がり、男の腕を掴んだ。
「やめろ! 高田さんを離せ! 殺す気か!?」
「あ?」
男の腕を外そうと、ギリギリと力を入れるが、男は顔色を全く変えず佑月の顔をじっと見据えてきた。
「てめえ、何してんだ! 若頭の腕を離せや」
後ろに控えていた男が、直ぐに佑月の身体を引き剥がしにくる。
「早く高田さんを離せよ!」
部下の腕から逃れようと、佑月は必死にもがきながら叫ぶ。この騒ぎで、誰かが警察に通報してくれればいいのにと。
すると、不意に若頭と呼ばれていた男が高田から手を離した。
「ゲホッ……ゲホッ」
激しく噎 せる高田に駆け寄りたかったが、佑月の腕は拘束されたままのために行けない。
「高田さん! 大丈夫ですか!?」
「だい……じょう……ゲホッゲホッ」
高田が無事をアピールするため、片手を上げる。それを見て安心した時、突然佑月の視界は男の顔で一杯になった。
「っ……!?」
「へぇー……こりゃまた、とんでもねぇべっぴんだなぁ」
恍惚とした表情で見つめてくる男の目に、身体にぞわりと悪寒が走っていった。
「あんた、こいつの女?」
若頭の男は高田を指差して言う。
「は? 俺は男だけど」
(こいつ、俺が女に見えんのか!?)
何が可笑しいのか、若頭の男は声を上げて笑う。
「クク……まあ、いいや。おい、高田ぁ。早くUSBよこせや」
そう言うや否や、若頭が床に座り込んでいた高田の顔を、おもいっきり蹴り飛ばした。
「がっ!」
強烈な蹴りを食らった高田は、そのまま崩れ落ちる。
「高田さん!! おいお前! USBなら俺が持ってる! 高田さんは関係ねぇんだから手を出すんじゃねぇよ!」
あまりの横暴さに、佑月は久々にキレた。
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