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絶体絶命 6
「なんだてめぇ! 誰に向かって口きいてやがる!」
鬼のような形相で部下の一人が、佑月の襟首を掴んできた。
「ぐっ……」
歯を食いしばるよりも速く、佑月は顔をおもいっきり殴られていた。
口腔内にじわりと血の味が広がっていく。殴られた箇所がじんじんと疼き、熱を持つ。
「おいおい、中村ぁ。顔は殴るんじゃねぇよ、顔はよぉ」
「はっ、申し訳ございません」
若頭は中村の頭を軽く小突いて、佑月の前に立った。
「ははっ、痛そうだ。アイツのパンチ力は半端ねぇからなぁ。お嬢ちゃんの綺麗な顔を傷物にしたんだ。オレが責任持つから、心配すんな」
若頭は佑月の殴られた箇所をベロリと舐め上げていく。
「くっ……やめろ……触るな!」
嫌悪感で顔を振って暴れてみるが、後ろにいる男は更にきつく締め上げてくる。
「っ……」
骨が軋む程の強い力のせいで、息が一瞬止まる。
「クク……いいね、その苦しそうな表情。女よりいい顔しやがる。あ……マジ勃ってきた」
そう言って自身の下半身を、佑月の身体に押し付けてくる。
「なっ……!? この……変態……やめろ!」
硬度のあるものを、グリグリと押し付け、呼吸を乱す男。
あまりのおぞましさに、堪えきれない程の吐き気に襲われる。
「なぁ……ちょっとこっち来いよ」
熱っぽく耳元で囁きながら、佑月のこめかみに何か冷たい物を当ててきた。佑月を拘束していた男はそれを見て、スッと離れていった。
「離せ!」
若頭はニタリと笑って、佑月の腕を強引に引っ張り、居間へと突き飛ばす。
「っ……何すんだ!」
「床に膝をつけろ」
「嫌だ……なにさせる気だ……」
「死にてえのか?」
佑月の髪を鷲掴みにし、こめかみに当てていた冷たい物、銃を眉間に当ててきた。
これだからやくざは嫌なんだ。卑怯な道具で人間を支配する。
佑月は腸 が煮えくり返りそうなのを、必死に抑えるしかなかった。
「早くしろ。それか、あそこに転がってる奴が死んじまってもいいのか?」
男がそう言うと、中村が高田の髪を掴み、顔を持ち上げた。ぐったりとまだ意識が回復していない高田の顔を見て、佑月は怒りで震える唇を噛んだ。
高田がこれ以上傷付けられるのは、耐えられない。佑月は観念して、男の前でゆっくりと膝をついた。
「いい子だ」
男は銃で佑月の顎を掬い上げ、満足そうな表情を見せてくる。佑月は今にも出そうな舌打ちを我慢して、目の前の男を睨みつけた。
一体何をさせる気なのかと警戒する佑月の前で、男が徐に自身のスラックスのボタンを外した。それを見た瞬間、嫌でも分かってしまうこの状況。
「おっと、何逃げてんだよ」
「ぐはっ」
逃げようと腰を上げた佑月の腹を、男が蹴り上げてきた。
「……ふざけん……じゃねえ! 冗談じゃねぇぞ……」
佑月は腹を押さえ、怒鳴りながら後退った。
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