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絶体絶命 11

 黒塗りの高級車に揺られ、佑月らは(くだん)の医者の元へと向かった。  一時間程走り、着いた場所は一棟の建物しかない山間部。人気もなく、いかにも怪しい雰囲気が漂っている。しかし、想像していたよりも建物の中は綺麗で設備も整っていた。  ドクターは三十代後半くらいか、一見すると人のいい優男に見えた。  そんなドクターだからか、緊張していた高田も身体から力を抜いていた。速やかに問診から入り、CT検査、レントゲンを行う様を見ていると、もぐりだということも忘れそうだ。  結果、頭部は問題なかったが、頬骨が少し骨折していたようだ。だがそれは軽いものだっため、自然治癒に任せるらしい。  後は熱を下げるために点滴が打たれると、みるみると顔色もよくなっていった。顔の腫れはまだまだ痛々しいが、入院するほどでもないようで、元気な姿となった高田は鎮痛剤を処方され、自宅へと帰された。  もぐりではあったが、〝医者〟に診てもらえた事が安心感に繋がったのか、高田は須藤に礼まで述べていた。本人が満足したのなら、もう何も言うことはないし、大事に至らず良かったと安心するべきなのだろう。  滅多なことがない限り、高田とはもう会うこともないだろう。この一期一会的な出会いがまた、この仕事の醍醐味と言えるものであった──。

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