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Wednesday 3
もう乗り慣れたと言っていい、高級車の後部座席。だが運転席との区切られた空間は、相変わらず息が詰まる。
それにしても何故いちいち仕切るのか。運転する者からすれば、除け者にされた気分にならないのだろうか。
この高級車のハンドルをいつも握るのは、真山という鉄仮面で、無表情の眼鏡をかけた男だ。 須藤の秘書で、用心棒も兼ねていると紹介された。
どう見ても須藤の方が強そうだが、真山はあらゆる武術の有段者だそうだ。
人は見かけによらない。
それに有能な秘書兼、用心棒ならこんな状況でも仕事と割りきって、いちいち気にしてないのかもしれないが。
……それよりもだ。
「須藤さん」
「ん?」
仕事か何かの資料を読んでいた須藤は、書類から顔を上げると佑月を見る。
「その……店に行く度に、俺を紹介するのやめて欲しいんだけど……」
「何故だ」
「何故って……イヤだからですよ」
それ以外に何があるというんだ。 須藤と食事をするだけでも我慢している事なのに、これ以上目立ちたくないに決まっている。
「お前は俺のものなんだ。よく行く店には紹介しておくのは当たり前だろ」
「……は?」
「なんて顔してんだ」
須藤の整った顔が僅かに怪訝そうに歪む。 きっと自分の顔はそれ以上に酷い顔をしているだろう。
「いや、だっておかしいだろ!?」
「何がおかしい」
「何がおかしいって……俺はいつからあんたのものになったんですか?」
苛立ちが増すが、落ち着いて冷静にならないと、須藤の思惑通りに話が進んでしまう。
「初めからだ」
「は? ……初めから?」
「そうだ」
シレっと答える須藤に、佑月は唖然としてしまうが、ボーっとしてる場合ではないと、気持ちを奮い立たせる。
「言っておきますが、俺はあんたのものになった事実はありません。そして、今後もなることはないです」
これだけはっきり言ってやれば、この自惚れ勘違い男も理解するだろう。
「そう言えば俺が引くとでも思ったのか? 成海」
「いや、引くとかじゃ──」
「諦めろと俺は言っただろ」
「なっ……!?」
突然須藤に手首を掴まれ、引っ張られる。
そして背中に片腕を回され、佑月の動きは封じられてしまう。
あまりの近さに先日のキスを思い出してしまい、無駄だとは思いつつも、もがいた。
「はな……せ……」
「俺がお前を逃がすとでも思ったか」
「いっ……」
力強い須藤の手に顎を掴まれ、佑月は上を向かせられる。
「いいか、欲しいと思ったものは、どんなことをしてでも手に入れるのが俺だ。どんなことをしてもだ。覚えておけ」
そう告げられた瞬間、佑月は再び須藤に唇を奪われていた。
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