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Camouflage 4

「でも三日前に、彼にその人と付き合ったって嘘を言ってしまったんです」 「なるほど……」  そりゃあ嘘もつきたくなるなと、佑月は頷く。 「そしたら彼が会わせろと言ってきて……。〝オレが納得したら、別れてやる〟って」  納得したらと言うが、そう簡単にいくとは思えないと佑月は少し気になった。 「お話は分かりました。恋人役を立てることは可能ですが、もし相手が納得しなかったらの場合があります。その時は──」 「それなら大丈夫です!」  突然大きな声を出した松本に、佑月は少し驚く。 遠慮がちに、小さな声でずっと話していた人とは思えない程の声だったために。 「あ……あの……すみません」  そんな自分にも驚いたのか、松本は焦ったように更に小さくなって背中を丸めてしまった。 「大丈夫ですよ松本さん。それよりも何かお考えがあるのでしょうか」 「考えというか……はい」  一旦言葉を区切った松本は、上目遣いで佑月をじっと見据えてきた。  その視線がやけに熱っぽくて、佑月は内心で首を傾げてしまう。 「あの……」 「はい」 「恋人のふりは……」 「はい」 「……貴方にしてほしいです……」 「え!?」  驚きの声は佑月からではなく、陸斗と海斗からだった。 佑月が後ろを振り返ると、二人が血相を変えてやってくる。 「それなら、オレらがします」  海斗が松本に勢いよく頼みこむ。  そんな双子の勢いに松本はまた小さくなっていく。 「陸斗、海斗──」 「いえ、せっかくの申し出嬉しいんですが……オレは成海さんにお願いしたいです……」  だけど声ははっきりと、自分の意思を主張していた。 「ですが、所長は……」 「所長である成海さんがお忙しいのは重々承知してます。だけど、オレ人見知りが激しくて……。でも成海さんは話しやすいし、安心出来るんです……。それに、一番の理由としては、成海さんなら彼も納得すると思うんです。すみません……」  頭を下げる松本に、陸斗と海斗は眉を八の字に下げ、佑月を心配そうに見る。  そんな二人を安心させるためにも、佑月は首肯してみせた。 「松本さん、分かりました。私で良ければお相手させて頂きます。では、これからのことを詰めて話していきましょうか」 「はい。ありがとうございます」  陸斗と海斗がこんなにも過剰に反応するのは、佑月の高校時代の出来事が尾を引いているからだろう。  同級生にレイプをされかけていた佑月を目の当たりにし、助けてくれた張本人である彼ら。 ゲイに偏見があるわけではないのだろうが、そこに佑月が関わると嫌悪を剥き出しにしてくる。  しかし、今回はあくまでも恋人のふりだ。 本当に親密になる必要はないわけだし、これは仕事なのだと、二人にも割り切ってもらうしかないのだ。

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